昨夜はスーパームーン、見事な月夜だった。
長男の習い事の送迎をした時、せっかくだからと車の中でベートーヴェンのピアノソナタ「月光」を聴く。演奏はルドルフ・ゼルキン。
第一楽章の静謐。優美な第二楽章。そして第三楽章でゼルキンが奔る。まさに圧巻の演奏。
ベートーヴェンが月夜に散歩をしているとピアノの音が聞こえた。弾いていたのは盲目の少女。驚いた彼がその家に上がって即興で弾いた曲がもとになり、ピアノソナタ「月光」が生まれた。という伝説があるが、どうやらこれはフィクションらしい。
中原中也は「お道化うた」という詩の中で、このエピソードをうたっている。
「月の光のそのことを、/盲目少女(めくらむすめ)に教へたは、/ベートーヱ"ンかシューバート?/俺の記憶の錯覚が、/今夜とちれてゐるけれど、/ベトちやんだとは思ふけど、/シュバちやんではなかつたらうか?//霧の降ったる秋の夜に、/庭・石段に腰掛けて、/月の光を浴びながら、/二人黙ってゐたけれど、/やがてビアノの部屋に入り、/泣かんばかりに弾き出した、/あれはシュバちやんではなかつたらうか?(後略)」
今朝起きたら、西の空にまだ大きな月が出ていた。
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