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2009年3月19日木曜日

日本酒には豆腐がよく似合う

日本酒には豆腐がよく似合う。 
日本酒に刺身、これは最良の組み合わせとして、巷間伝えられている。例えばここに、小生愛飲の銘酒「神亀」があったとする。その隣に、スーパー山内で千二百円也の中トロを置く。これ以上美しいカップルはない。神亀といえば、日本酒界の押しも押されもせぬエース。マグロ中トロは、スーパー山内鮮魚部が自信を持って推薦する、魚界の才媛である。それは、あたかも、プロ野球の人気球団のエースが、モデルやスチュワーデスと結ばれるようなものだ。 
この豪華な組み合わせの前に、豆腐はいかにも分が悪い。スーパー山内で、八十七円。ピンクに肌を染まらせた中トロに対し、色は真っ白で、形もまっ四角、色気も愛嬌もない。 
しかしだね、この豆腐というやつが、実に日本酒の味を引き立ててくれるのである。鼻腔に芳醇な香りを漂わせつつ、何の未練もなく喉を通過する酒。その、わずかに残るべたつきを、さり気なく払拭する豆腐。その絶妙のコンビネーションは、酒に、そういえば、おれの隣にはいつもお前がいたんだなあ、という感慨を喚起させずにはおかないであろう。 
中トロがモデルなら、日本酒と豆腐の組み合わせは、エースと、高校の時の野球部のマネージャーといったような、マコトにほほえましくも、大地にしっかりと足をつけた関係と言えまいか。 
しかも、暑い時は冷奴、寒い時は湯豆腐と、いかようにも合わせてくれる。そう考えると、あの白ささえもが、花嫁の白無垢を連想させてくれるではありませんか。 
中トロだと、こうはいきませんよ。刺身じゃなきゃ駄目、山葵は本ワサ、醤油に溶くなんてとんでもない、と気位が高いだけに注文が多い。 
ところで、倒幕の立役者の一人、大村益次郎は、豆腐で酒を飲むのが、唯一の楽しみだったという。高校生の時やってたNHKの大河ドラマ「花神」での、彼の杯を口に運ぶ手つきが印象的で、私はいまだにそれを真似しているのである。 

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