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2012年5月7日月曜日

子どもの頃嫌いで、大人になって好きになった食べ物の代表的なものといえば、葱である。
いや、ほんと嫌いだった。無理して食べて吐いたことすらある。あの甘みが気持ち悪かったのに、その同じ味が好きになるんだねえ。嗜好って絶対的なものではないんだな。
古今亭志ん朝の「二番煎じ」に出てくる伊勢屋の旦那のように、あのすき焼きのくたくたになった葱が、今は心から好き。(「二番煎じ」の方は猪鍋だけど。)また志ん朝の、はふはふしながら葱を食べる仕草がたまらなく旨そうなんだ。
葱と豆腐の味噌汁もしみじみ旨い。昔はあんなに嫌だったのに。不思議なもんだ。豆腐と葱の相性はいいな。冷奴でも湯豆腐でも葱が加わると一段と旨くなる。
焼鳥もね、肉だけよりむしろ「ねぎま」がいい。葱がうまくアクセントになっているんだね。そう言えば、学生の頃通っていた焼鳥屋のメニューに「かもねぎ」というのがあった。何だと思って頼んだら、見事に葱オンリーの串焼きだった。「客の方がカモか?」と冗談を言ったっけ。
蕎麦の場合、あの薬味の葱は、私はあまりいただかない。特にもりの場合はちょっと。蕎麦を邪魔するような気がするんだよな。どこかのフードコートの蕎麦で、「ねぎそば」というのがあって、食べてみたんだが、あんまり葱が多すぎて蕎麦の味なんかしなかった。何事もほどほどだと思いますよ。でも、鳥南蛮、鴨南蛮の葱はいい。まさに絶妙。蕎麦だけつーっとたぐって、後は味のしみた葱をつまみに熱燗を飲むのもいい。
麺類では「ねぎラーメン」が革命的だったね。
そして納豆。辛子を効かして、葱をとんとんって刻んで入れて、そいつをぐるぐるっとかき回したやつを、ほかほかのおまんまの上に…。たまんないね。日本人にうまれてよかった、というより納豆の本場茨城に生まれてよかったと思います。
あれ、葱の話が納豆の話になっちゃった。葱っていうのはあくまで脇役なんだよね。主役を張ることはない。でもそこが奥床しくっていいよねえ。

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