写真はアパート前の路地。わが幸和荘は右奥のトタン張りの2階建て。
風呂は、もちろん銭湯。アパートから尻手駅の方に歩いて5分ぐらいの所にあった。
湯船の中に真っ赤な電灯が仕込んであった。赤外線風呂というのかな、それがウリだったようだ。ご近所だったフォークシンガーの友川かずきを、この銭湯で見かけた。もちろん、声を掛けることはできなかったが。
風呂の帰りは、コンビニエンスあきやまに寄って食料を買い、三玉酒店で酒を買った。
それから、アパートに帰って一人酒を飲むことになるんだろうが、晩飯はどうしたっけ?あまり覚えがないな。晩酌をやり出したのは就職してからだから、多分、晩飯は食べたよな。米は田舎から持ってくるので不自由はしない。自分で飯を炊いて、缶詰とかレトルトのカレーやシチューなんかで、風呂に行く前に食べてたんだろうなあ。
まあそれはともかく酒だ。
まずはビール。500ml缶を1本か2本あればいい。
メインは日本酒。日本盛とか黄桜の2級を飲んでいた。だが、3日もすると1升が空いちゃうので、後にはウイスキーにした。最初のうちはサントリーホワイトを飲んでいたけど、そのうちレッドのビッグサイズを買うようになった。そいつを例の笠間焼の湯呑で水割りにして飲んだ。
つまみは最初は冷凍餃子を焼くことが多かった。あとは小鉢に豆菓子なんぞを入れてつまんでたな。よく作ったのがスクランブルエッグ。塩胡椒、それにガーリックパウダーを入れるのがミソ。簡単で旨い。
そのうち、酒のお供に落語やら本やら音楽やらを手当たり次第に引っ張り出す。本なら、太宰治、坂口安吾、中原中也なんてところ。音楽はフォークをよく聴いた。友川かずき、三上寛、友部正人の3人は外せない。女性シンガーでは森田童子。ちょっとメジャーなところでは泉谷しげるや岡林信康。(そういえばあの部屋の蛍光灯の豆電の色は青だった。泉谷の『裸の街』、「ブルーランプの部屋でお前と暮らしたい、それだけの俺」というフレーズがぐっときたねえ。)川崎で聴く宇崎竜童はいい。
こう並べると、暗いなあ。でも、こんな世界にどっぷりつかるのも、これはこれで快感なのよ。誰もこんな世界に付き合ってもくれないしね。こんな風に好き勝手飲んでいると、飲めば飲むほど頭が冴えてくるような気がしたもんだ。
川崎では外で飲むことはなかった。馴染みの飲み屋を作ることもしなかったな。一人になって内省的な飲み方をするために、私はアパートに帰って来たのかもしれない。あの四畳半は、そのためにもうってつけの空間だったのだ。
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