3年の夏合宿、最後の夜、コンパの後か、すぐには眠れなかった。
真打になれるとすれば、このタイミングで呼ばれるはずだった。
果たして、同輩の幹部が私を起こしに来た。
緊張して、三代目紫雀さんの部屋に行く。そこには、OBの二代目紫雀さんもいた。幹部の酒合丈君、八海君、悟空君もその場に控えていた。
三代目紫雀さんの口から、私の真打昇進が決定したということを告げられた。嬉しかったというより、ほっとしたといった方が正直な気持ちだったかもしれない。
「名前はどうする?」と訊かれた。
二代目紫雀さんの勧めもあり、「松風亭風柳」を襲名することにした。「松竹亭金瓶梅」にも憧れはあったが、私としては一門の「松風亭」で真打になりたかったのである。
合宿明けに初代と先代に連絡して、承認してもらうように指示された。
合宿の最終日、私の真打昇進と三代目松風亭風柳襲名が発表された。
伊豆河津の駅前で部員から胴上げされた。真打になったのだな、という実感が、初めてわいてきた。
川崎のアパートに帰った夜、初代さんと先代さんに電話した。もちろん自前の電話はアパートにない。国道沿いの公衆電話からだった。
初代さんは「(真打に)なると思ってましたよ。」と言ってくださった。「合宿の高座を聴いてそう思ってました。」初代さんは、我々のような者でも丁寧語で話してくださる。
次は先代さんだ。テープではよく聴いていたが、お話しするのは初めてだ。突然の電話に驚かれたようだったが、名前を継ぐことを快諾してくださった。
夏休み明け、楽家伝助改め三代目松風亭風柳襲名並びに真打昇進披露寄席が開かれた。口上は、幹部から悟空君、真打からは紫雀さんが就職活動のため、9月の二つ目勉強会で真打昇進を決めていた、弥っ太改め艶雀君が務めてくれた。私はトリで『たがや』を演じた。
終演後、部室で恒例の宴会。昼酒は旨いものだが、とりわけ旨い酒だったと思う。
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