結婚したばかりの頃、春になると房総へ行った。
妻は、ポピーや菜の花が咲き乱れる風景が好きで、私は、つげ義春や安西水丸のマンガの雰囲気に触れるのが好きで、毎年のように車を走らせるのだった。
その年、富津に寄ったのは、もちろん、川崎長太郎の『ふっつ・とみうら』という小説が頭にあったからだ。
川崎長太郎という人は、小田原の魚屋の息子として生まれ、文学を志し上京したが、やがて帰郷して、実家のトタン張りの物置に寝起きし、朝は公衆便所の水道で顔を洗い、近くの食堂でちらし寿司を食べ、女郎屋を徘徊し、ミカン箱で小説を書くという、いかにもな私小説家。
60を過ぎて30歳年下の妻を得た。その妻と内房を旅行した話が『ふっつ・とみうら』である。これがまた、しみじみとしていい話なのだな。
というわけで、富津へ行ってみた。
富津はイオンなんかがある、よくある田舎町だった。
川崎夫妻が寄った国民宿舎を見て、漁港近くをぶらぶらする。
そこで見つけたのが、この劇場跡。多分、営業はしていないだろう。
感動して、けっこう写真を撮っちゃったよ。
以下に載せてみる。
ね、シブいでしょ。
最後に漁港の写真です。
0 件のコメント:
コメントを投稿