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2011年10月11日火曜日

夢之酒 秋の巻

ここんとこ仕事が立て込んで、ちょっとばかり忙しい。
こういう時は現実逃避、夢之酒シリーズといこう。

渓流沿いの温泉宿。暮れゆく紅葉を眺めながら風呂に入り、さっぱりしたところで、夕食の膳に向かう。
山女の塩焼き、きのこの天ぷら、新蕎麦、牛肉の陶版焼き等が並ぶ。
まずはきりっと冷えたビール。すぐに燗酒に切り替える。
ふと見ると、松茸の土瓶蒸しがあるではないの。実は私、汁物で酒を飲むのが好きなのだ。
汁を口に含むと馥郁たる香りが鼻腔に立ち上る。いいねえ。
私は飲みに行っても、あまり土瓶蒸しは頼まない。っていうか、土瓶蒸しを出すような店には、まず行かない。やはりあれは「高嶺の花」なんだよなあ。
松茸の土瓶蒸しで思い出すのは、高山の夜だ。
岐阜のT君が結婚した時、式の後、高山の街に出て、大学時代の友人3夫婦で飲んだ。その店で、土瓶蒸しが意外と安かった。「思い切って頼もうぜ」と私が言うと、I君が「いっちゃうか?」と応じた。旨かったと思うのだが、その後けっこうべろべろになってしまい、記憶が定かではない。やはり、ああいうものはしっとりと落ち着いて味わった方がいいんだな。
まあいい。ここは渓流沿いの温泉宿だ。じっくり楽しもう。
せせらぎの音が耳に届く。浴衣の妻(にしておいた方が間違いはあるまい)が、熱燗徳利の首つまんで、もう一杯いかがなんて、妙に色っぽかったりするんだよねえ。

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