鈴本演芸場。昼の部。平日だが、客はそこそこ入っている。
前座は桃月庵はまぐりの「子褒め」。前座らしい素直な口調。ひらがな4文字の芸名って、めくりに書きにくいよな、と大学時代寄席文字書きの係だった私は思う。
二つ目に、真打入船亭扇里が上がる。ネタは「ぞろぞろ」。地味な噺で笑いは少ないが、お客はしっかり聴いていた。
お次はこの度二つ目に昇進した入船亭遊京。芸名に「京」の字が入っているのは、京都の某有名国立大の出身からとのこと。人呼んで、「落語界の湯川秀樹」。黒紋付きの出で立ち、初々しい。「たらちね」を一席。プロの落語家が口を揃えて言うのは、「二つ目昇進がいちばん嬉しかった」ということ。大きく飛躍してもらいたい。…昼酒が利いて、私の意識は多少飛んでましたが。
鈴々舎馬風登場。立川談志、毒蝮三太夫の思い出を語る。相変わらずしっかり笑いを取っている。口調は確かだが、足元がちょっと覚束ない。よちよちと現れ、よちおちと下りて行った。御年80、まだまだ現役で頑張ってほしい人だ。
入船亭扇辰は「目黒のさんま」。上手いねえ。さんまが食べたくなったよ。すっかり頭が白くなった。そのせいか、またはこのネタのせいか、ちょっと先代馬生を思わせる。ちょいちょい挟む現代的なくすぐりもけっこうウケておりました。
「白鳥の湖」の出囃子に乗って、三遊亭白鳥が登場。シルバー人材センターから鈴本演芸場に前座として派遣された、元落研の80歳の老人が主人公の新作(長いな)。白鳥ワールドが炸裂。大いに笑わせてもらいました。
ここでロケット団の漫才が入る。「レッドカーペットで売れた」という枕詞はもう必要ないな。三浦のボケは絶品。赤いジャケットに自信を感じる。
仲トリは桃月庵白酒。ネタは「風呂敷」。声がいい。テンポがいい。際立つ個性。そしてまだまだ余力を感じる。大器だ。これからを見続けていきたい落語家の一人。古今亭志ん朝の「風呂敷」を思い出した。
クイツキは三遊亭小円歌の三味線漫談。志ん朝の出囃子「老松」、先代小さんの「序の舞」を弾いてくれる。太鼓を叩く前座さんは林家時蔵の娘とのこと。しばし追憶に浸る。小円歌姐さん、相変わらずおきゃんでいいねえ。
お次の古今亭菊之丞は「もと犬」。最初客席で私語が多くちょっとかわいそうだったが、動じることなく噺に引き込んでいく。この人の高座姿はきれいでいいね。
春風亭正朝、「悋気の火の玉」。ベテランの味か、自在に客を掴んでゆく。明るくて軽くていいなあ。サゲの「あたしのじゃおいしくないでしょ、ふん」は声を低くして、おっかない本妻さんで演ってた。先代文楽の本妻さんは可愛かったな。
膝代わりは江戸家猫八。子猫時代はスーツを着て立っての高座だったが、猫八になって着物を着、座って芸をするようになった。猫八代々に伝わる物真似を、ソフトな解説を交え聞かせてくれる。いい気持ちでトリにつなげてくれた。
トリは入船亭扇遊。当年62歳。柳家さん喬、柳家権太楼、五街道雲助、春風亭一朝といった人たちに続く年代である。上手いよね。端正だけど爆発力に欠ける所があり、寄席の半ばだと目立たない時があるけど、こうしてじっくりトリで聴くとその良さが引き立つ。「試し酒」を35分、みっちりやって客を片時もそらすことがなかった。師匠扇橋亡き後の入船亭一門のリーダーである。今が円熟期、身体を大事にして長く活躍してもらいたい。
この芝居は実力派が多かった。落語はいいなあと改めて思いましたよ。
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