今日は十三夜。お月見である。
朝から台風が吹き荒れたが、午後から台風一過の青空が広がった。
夜には見事な月夜になったね。
晩飯は、けんちん汁、おでん、さんまの塩焼きで菊正宗。さんまには頂き物のすだちをかける。
これがまた旨いの。さわやかな酸味が日本酒に合うねえ。
おでんは昨夜の残りだが、それだけに味が染みて旨い。
そして、菊正宗樽酒。秋はこういう腰のある酒だな。
毎日色々あるけど、こういう一日の終わりはいいもんだ。
明日も頑張ろう。
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2014年10月5日日曜日
三遊亭圓楽・春風亭小朝二人会
昨日、地元の文化センターの「圓楽・小朝二人会」に、長男を連れて観に行った。
本来は料金4000円のところ、中学生はご招待、保護者は割引になるという。息子に聞くと、行きたいというので、すぐさま申し込ませた。
前座は三遊亭圓丈門下、ふう丈。ネタは『転失気』。声がはっきり出てて、明るい。こういう前座さんはいいね。
緞帳が下り、「さわぎ」の出囃子が鳴り始める。春風亭小朝の登場だ。高座には膝隠し。格子柄の着物に袴を着けて、金髪ソフトモヒカンの小朝が高座に座る。
マクラはジョーク集といった趣き。ソ連ジョークを安部首相にアレンジしたものを含め、爆笑を誘う。上手いもんだねえ。洒落てるし、時事問題も流行の愛国に走らず、いかにも頭が良さそうだ。
ただねえ、ちょいちょい下ネタを放り込んでくるんだね。「断捨離」ネタで、亭主を例にとり、「5年間ベッドで使用していないものはゴミなんです。」と言った後で、「ある時酔っ払って帰って来て、求めてきたりしても、その気にはなれませんよね。こういうのを“燃えないゴミ”と言うんです。」と落としたりするんだけど、こういうの、ご招待の中学生相手に演っていいのかね。
ネタは新作。カラオケ葬の話。膝隠しの下にハンドマイク仕込んだりして、歌う歌う。客にもよくウケてたねえ。小朝はこういうエンターテイメントな落語を演りたいんだろうね。あの36人抜き真打昇進をリアルタイムで知っている私は、小朝には名人になって欲しかったのだが。
名人ばかりが落語家の目指すところではないと、私は常々主張しているが、名人になるべき素質を持っている人は、名人になって欲しいと思う。何かその点で小朝は、自らが落語界のてっぺんに座るのではなく、仕掛け人の方に逃げているようで、私としてはちょっと歯がゆい。
そして、トリは三遊亭圓楽。開口一番「小朝さんとは修業仲間ですが、今日はやりたい放題でしたね。」と言う。思わず笑っちゃった。まさにそんな感じだったねえ。
圓楽の方は「笑点」ネタで笑いを取る。特に桂歌丸の話が面白かった。私も、歌丸には笑点50周年も健在でいて欲しいと思うよ。
で、ネタは『短命』。上手いよ。達者だと思うよ。でもなあ、ご招待の中学生を前に演るネタかなあ。連れてきた親としては「お前、あの噺分かったか?」と息子に訊きづらいよねえ。
圓楽は地元の文化ホールで過去2回聴く機会があったけど、その時のネタが『町内の若い衆』、『禁酒番屋』と、いずれも下ネタがかっているんだよね。
確かに田舎で、落語の粋なんぞ分かる客は少ないし、「行く先々の水に合わねば」ということなんだろうけど、確実にウケると判断したのがそれなんだな。
口調は男らしいし、職人なんか素晴らしい。センスもいいし、上手い人だと私は思う。それだけに、落語の凄味を感じさせるネタを聴きたかった。
ま、よくウケてたし、面白かったよ。客も満足だったんじゃない。
お二人とも達者な芸だった。そういうことです。
本来は料金4000円のところ、中学生はご招待、保護者は割引になるという。息子に聞くと、行きたいというので、すぐさま申し込ませた。
前座は三遊亭圓丈門下、ふう丈。ネタは『転失気』。声がはっきり出てて、明るい。こういう前座さんはいいね。
緞帳が下り、「さわぎ」の出囃子が鳴り始める。春風亭小朝の登場だ。高座には膝隠し。格子柄の着物に袴を着けて、金髪ソフトモヒカンの小朝が高座に座る。
マクラはジョーク集といった趣き。ソ連ジョークを安部首相にアレンジしたものを含め、爆笑を誘う。上手いもんだねえ。洒落てるし、時事問題も流行の愛国に走らず、いかにも頭が良さそうだ。
ただねえ、ちょいちょい下ネタを放り込んでくるんだね。「断捨離」ネタで、亭主を例にとり、「5年間ベッドで使用していないものはゴミなんです。」と言った後で、「ある時酔っ払って帰って来て、求めてきたりしても、その気にはなれませんよね。こういうのを“燃えないゴミ”と言うんです。」と落としたりするんだけど、こういうの、ご招待の中学生相手に演っていいのかね。
ネタは新作。カラオケ葬の話。膝隠しの下にハンドマイク仕込んだりして、歌う歌う。客にもよくウケてたねえ。小朝はこういうエンターテイメントな落語を演りたいんだろうね。あの36人抜き真打昇進をリアルタイムで知っている私は、小朝には名人になって欲しかったのだが。
名人ばかりが落語家の目指すところではないと、私は常々主張しているが、名人になるべき素質を持っている人は、名人になって欲しいと思う。何かその点で小朝は、自らが落語界のてっぺんに座るのではなく、仕掛け人の方に逃げているようで、私としてはちょっと歯がゆい。
そして、トリは三遊亭圓楽。開口一番「小朝さんとは修業仲間ですが、今日はやりたい放題でしたね。」と言う。思わず笑っちゃった。まさにそんな感じだったねえ。
圓楽の方は「笑点」ネタで笑いを取る。特に桂歌丸の話が面白かった。私も、歌丸には笑点50周年も健在でいて欲しいと思うよ。
で、ネタは『短命』。上手いよ。達者だと思うよ。でもなあ、ご招待の中学生を前に演るネタかなあ。連れてきた親としては「お前、あの噺分かったか?」と息子に訊きづらいよねえ。
圓楽は地元の文化ホールで過去2回聴く機会があったけど、その時のネタが『町内の若い衆』、『禁酒番屋』と、いずれも下ネタがかっているんだよね。
確かに田舎で、落語の粋なんぞ分かる客は少ないし、「行く先々の水に合わねば」ということなんだろうけど、確実にウケると判断したのがそれなんだな。
口調は男らしいし、職人なんか素晴らしい。センスもいいし、上手い人だと私は思う。それだけに、落語の凄味を感じさせるネタを聴きたかった。
ま、よくウケてたし、面白かったよ。客も満足だったんじゃない。
お二人とも達者な芸だった。そういうことです。
2014年10月2日木曜日
平日の休み
平日の休み。
こういう時は妻とデートすることにしている。
たまには子ども抜きでゆっくり買い物でもさせてあげたい。
というので、今回は阿見のアウトレットへ行く。
一回りしてから、時間を決めて別行動。お互いのペースでお店を見る。
昼食はイタリアン。私はオリーブとたこのパスタ。妻はマルゲリータ。両方旨し。
妻はセーター、私はバッグを買う。大量に買い込むというのができない私たち。でも、気に入ったものが買えてよかったよ。
アイスクリームを食べて帰る。
おかげさまでのんびりできた。また、どこか行きましょう。
上の写真はアウトレットから望む牛久大仏。このシュールなとこがここの魅力ですな。
こういう時は妻とデートすることにしている。
たまには子ども抜きでゆっくり買い物でもさせてあげたい。
というので、今回は阿見のアウトレットへ行く。
一回りしてから、時間を決めて別行動。お互いのペースでお店を見る。
昼食はイタリアン。私はオリーブとたこのパスタ。妻はマルゲリータ。両方旨し。
妻はセーター、私はバッグを買う。大量に買い込むというのができない私たち。でも、気に入ったものが買えてよかったよ。
アイスクリームを食べて帰る。
おかげさまでのんびりできた。また、どこか行きましょう。
上の写真はアウトレットから望む牛久大仏。このシュールなとこがここの魅力ですな。
2014年9月30日火曜日
谷中点景
夏の終わりに東京を歩いた時の写真を幾つか載せてみる。
上の写真は、日暮里駅から谷中に向かう所。前方に小さく質屋「おじさん」の看板が見える。
矢野誠一『志ん生のいる風景』には、「団子坂で車を捨てて、『おじさん』というおかしな名前の質屋を目標に行くのが古今亭志ん生の家を訪ねるときのつねで、いつもこころがはずんだものだが、」という一節がある。
まだストックがあるので、折を見て載せていこうと思います。
上の写真は、日暮里駅から谷中に向かう所。前方に小さく質屋「おじさん」の看板が見える。
矢野誠一『志ん生のいる風景』には、「団子坂で車を捨てて、『おじさん』というおかしな名前の質屋を目標に行くのが古今亭志ん生の家を訪ねるときのつねで、いつもこころがはずんだものだが、」という一節がある。
トップの写真の所から、ちょいと脇に入った辺り。絵になる建物が至る所にある。
窓に「貸室」の看板発見。こういう所に隠れ家を借りてみたい。
谷中銀座の酒屋さんの屋根の猫。これ作り物なのよ。よくできてるねえ。
よみせ通りを三崎坂の方に向かう所も、好みの建物が多い。
2014年9月25日木曜日
2014年9月23日火曜日
風柳の根多帳⑨
当時、私は21歳。女房はおろか彼女さえいなかった。
その私が、夫婦の噺である『芝浜』に、どうしてのめり込んだのか。
私が特に力を入れた場面がある。
まず、女房が金を拾ったのが夢だと信じ込ませる場面。ここは志ん朝の演出を採った。
「お前さんは朝起きて湯へ行ったの!帰りに大勢友達を連れて来て、さんざん飲み食いして寝たんじゃないか!いつ芝の浜へ行ったんだい?」
「どうせ夢を見るんだったら、52両稼いだって夢を見とくれよ。あたしが隠したって言うのかい?だったら捜しゃいいんだ。どこだい?押入れかい?天井裏かい?縁の下かい?どこだって捜しゃいいんだ!」
海で拾ったとはいえ、他人の金に手をつけたとあってはただではすまない。ましてや52両の大金だ。夢にしてしまうことで、女房が亭主を必死に守ろうとする。
このような存在を、私は強く求めていたのだろう。(私には彼女はいなかったが、好きな人もいなかったとまでは言わない。しかし、その人とはこういう関係にはなれないな、という予感があった。)
そして、3年目の大晦日。裏長屋でくすぶっていた棒手振りが、若い者の二、三人を使う魚屋の主になって、昔の自分を振り返る場面。
「俺は、昔、酒を旨いと思って飲んでいたんだろうか。考えてみりゃあ、俺は酒に逃げていたのかもしれねえな。今、若え者が愚痴をこぼすとな、俺は言ってやるんだ。まずは、とにかく働いてみろ。一心に働いてみると、そこから何か見えてくるぞ、ってな。」
これは小三治の演出に、自分の言葉を足してみた。(今ならブラック企業の経営者みたいな台詞だけど。)
私は、何度かこのブログでも書いたが、大学時代は無頼派を気取っていた。魚勝の述懐のような価値観を否定する所に、私の存在価値があると思っていた。私は酒に酔うと、こう心の中で呟いたものだ。「生きよ、堕ちよ。ばかやろめ。」
しかし、この頃、私は落語家になることを諦め、大学に入る頃に抱いていた夢を果たすべく歩き出そうとしていた。私は無頼派から脱却しようとしていたのだ。
桂三木助は、かつて「隼の七」と呼ばれた博打うちだった。それが娘のような、齢の離れた自分の踊りの弟子に惚れ、一緒になるために生活を建て直し、芸の道に精進した。その自分の姿を、彼は『芝浜』の魚勝に投影してみせた。
三木助と同じにしては申し訳ないが、私は私なりに拙いながらも、魚勝の再生に自分を重ねようとしていたのかもしれない。大学にも落研にも、『芝浜』を演ることで一区切りつけようとしていた、とも言える。
サゲを言って頭を下げ、追い出しの太鼓を聞きながら、私は演りきった想いでいっぱいだった。
緞帳が下り、呆けたように舞台の袖に戻った私に、太鼓を叩き終えた三笑亭小夢(現桂扇生)さんが言った。「ばかうま。よかったよ。」
この言葉は嬉しかった。今も忘れない。
その私が、夫婦の噺である『芝浜』に、どうしてのめり込んだのか。
私が特に力を入れた場面がある。
まず、女房が金を拾ったのが夢だと信じ込ませる場面。ここは志ん朝の演出を採った。
「お前さんは朝起きて湯へ行ったの!帰りに大勢友達を連れて来て、さんざん飲み食いして寝たんじゃないか!いつ芝の浜へ行ったんだい?」
「どうせ夢を見るんだったら、52両稼いだって夢を見とくれよ。あたしが隠したって言うのかい?だったら捜しゃいいんだ。どこだい?押入れかい?天井裏かい?縁の下かい?どこだって捜しゃいいんだ!」
海で拾ったとはいえ、他人の金に手をつけたとあってはただではすまない。ましてや52両の大金だ。夢にしてしまうことで、女房が亭主を必死に守ろうとする。
このような存在を、私は強く求めていたのだろう。(私には彼女はいなかったが、好きな人もいなかったとまでは言わない。しかし、その人とはこういう関係にはなれないな、という予感があった。)
そして、3年目の大晦日。裏長屋でくすぶっていた棒手振りが、若い者の二、三人を使う魚屋の主になって、昔の自分を振り返る場面。
「俺は、昔、酒を旨いと思って飲んでいたんだろうか。考えてみりゃあ、俺は酒に逃げていたのかもしれねえな。今、若え者が愚痴をこぼすとな、俺は言ってやるんだ。まずは、とにかく働いてみろ。一心に働いてみると、そこから何か見えてくるぞ、ってな。」
これは小三治の演出に、自分の言葉を足してみた。(今ならブラック企業の経営者みたいな台詞だけど。)
私は、何度かこのブログでも書いたが、大学時代は無頼派を気取っていた。魚勝の述懐のような価値観を否定する所に、私の存在価値があると思っていた。私は酒に酔うと、こう心の中で呟いたものだ。「生きよ、堕ちよ。ばかやろめ。」
しかし、この頃、私は落語家になることを諦め、大学に入る頃に抱いていた夢を果たすべく歩き出そうとしていた。私は無頼派から脱却しようとしていたのだ。
桂三木助は、かつて「隼の七」と呼ばれた博打うちだった。それが娘のような、齢の離れた自分の踊りの弟子に惚れ、一緒になるために生活を建て直し、芸の道に精進した。その自分の姿を、彼は『芝浜』の魚勝に投影してみせた。
三木助と同じにしては申し訳ないが、私は私なりに拙いながらも、魚勝の再生に自分を重ねようとしていたのかもしれない。大学にも落研にも、『芝浜』を演ることで一区切りつけようとしていた、とも言える。
サゲを言って頭を下げ、追い出しの太鼓を聞きながら、私は演りきった想いでいっぱいだった。
緞帳が下り、呆けたように舞台の袖に戻った私に、太鼓を叩き終えた三笑亭小夢(現桂扇生)さんが言った。「ばかうま。よかったよ。」
この言葉は嬉しかった。今も忘れない。
第18回S大寄席の番組です。
「かぜ 17号」から。
2014年9月17日水曜日
風柳の根多帳⑧
『芝浜』の話の続き。
本番は、今はなき新宿山野ホール。山野愛子美容室が経営するホールで、小田急線の線路沿いにあった。
補導出演は浮世亭写楽(現九代目三笑亭可楽)師匠。(三笑亭夢楽師匠は所用で出演いただけなかった。)
落語だけ9席続く番組だ。学生の落語をそれだけ聴かされるのだから、お客も相当覚悟がいる。だからこそ演者一人一人も、精一杯噺を仕上げてくるのだ。
写楽師匠の『町内の若い衆』の後、いよいよトリの私の出番だ。
桂文楽に倣って、人を扇子で掌に三回書いて飲み込む。出囃子は「中の舞」。歩き出すのが、ちょっと早かったが、三味線の浜田よし子さんが上手く合わせてくれた。
「いよいよ私で最後です。ここまで残ってくださったのは、よっぽど落語が好きな人か、私の身内か、どちらかだと思いますが。」と喋り出すと、ふっと空気が和んだような気がした。いいお客だ、私はそう思った。
さて、『芝浜』のマクラだが。
三木助は「曙や白魚のしろきこと一寸」という芭蕉の句(三木助は「翁の句」と呼んだ)を引いて、隅田川で白魚が採れたという情景を描き、粋と気障のぎりぎりの線を突く。談志は、『芝浜』の女房が、果たしていい女房なのか、疑問を呈しながら噺に入る。志ん朝は三道楽の話題から、魚屋が仕事を休むまでの過程を丁寧に語り込む。小三治は、唐突に「ちょいとお前さん、起きとくれよ」と本題に入ってゆく。四人ともそれぞれに個性が出ていて面白い。
私も自分なりのマクラを作ってみた。概略はこんな感じ。
「卒業が迫り、仕事の目星もついて、これで人生が決まったようで、何となく暗くなる。後の楽しみはどんな人と結婚するかだな。早く結婚して子どもが欲しい。男の子が生まれたら、落語家にしようかな。「落語養成ギブス」かなんかつけて。毎朝、正座1時間ぐらいさせて。「間が悪い」とか言って引っ叩いたりして。そんな、明るい家庭を、築いていきたいと思っておりますが…。」
昭和の50年代ぐらいから、プロの落語家でも、お決まりのマクラではなく、自分の了見を自分の言葉で喋る人が出てきた。(もちろん立川談志が、その最先端を行っていた。)私もそんな時代の空気に感化されていたのである。
そこから間を取って、「ちょいと、お前さん起きとくれよ」と噺に入る。
この辺りは、小三治の演出を意識したな。あんな風に、すっと噺に入ってみたかったのだ。
今回はここまで。この話は、あと1回ぐらい続きます。
本番は、今はなき新宿山野ホール。山野愛子美容室が経営するホールで、小田急線の線路沿いにあった。
補導出演は浮世亭写楽(現九代目三笑亭可楽)師匠。(三笑亭夢楽師匠は所用で出演いただけなかった。)
落語だけ9席続く番組だ。学生の落語をそれだけ聴かされるのだから、お客も相当覚悟がいる。だからこそ演者一人一人も、精一杯噺を仕上げてくるのだ。
写楽師匠の『町内の若い衆』の後、いよいよトリの私の出番だ。
桂文楽に倣って、人を扇子で掌に三回書いて飲み込む。出囃子は「中の舞」。歩き出すのが、ちょっと早かったが、三味線の浜田よし子さんが上手く合わせてくれた。
「いよいよ私で最後です。ここまで残ってくださったのは、よっぽど落語が好きな人か、私の身内か、どちらかだと思いますが。」と喋り出すと、ふっと空気が和んだような気がした。いいお客だ、私はそう思った。
さて、『芝浜』のマクラだが。
三木助は「曙や白魚のしろきこと一寸」という芭蕉の句(三木助は「翁の句」と呼んだ)を引いて、隅田川で白魚が採れたという情景を描き、粋と気障のぎりぎりの線を突く。談志は、『芝浜』の女房が、果たしていい女房なのか、疑問を呈しながら噺に入る。志ん朝は三道楽の話題から、魚屋が仕事を休むまでの過程を丁寧に語り込む。小三治は、唐突に「ちょいとお前さん、起きとくれよ」と本題に入ってゆく。四人ともそれぞれに個性が出ていて面白い。
私も自分なりのマクラを作ってみた。概略はこんな感じ。
「卒業が迫り、仕事の目星もついて、これで人生が決まったようで、何となく暗くなる。後の楽しみはどんな人と結婚するかだな。早く結婚して子どもが欲しい。男の子が生まれたら、落語家にしようかな。「落語養成ギブス」かなんかつけて。毎朝、正座1時間ぐらいさせて。「間が悪い」とか言って引っ叩いたりして。そんな、明るい家庭を、築いていきたいと思っておりますが…。」
昭和の50年代ぐらいから、プロの落語家でも、お決まりのマクラではなく、自分の了見を自分の言葉で喋る人が出てきた。(もちろん立川談志が、その最先端を行っていた。)私もそんな時代の空気に感化されていたのである。
そこから間を取って、「ちょいと、お前さん起きとくれよ」と噺に入る。
この辺りは、小三治の演出を意識したな。あんな風に、すっと噺に入ってみたかったのだ。
今回はここまで。この話は、あと1回ぐらい続きます。
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