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2009年6月18日木曜日

森鴎外『阿部一族・舞姫』

森鴎外『阿部一族・舞姫』を読む。高校時代に買った、新潮文庫版である。
凄い文章だな。
『舞姫』の華麗な文章に、まず心を奪われた。文語文だけに敷居は高いが、これは原文で読まなきゃ駄目だ。口語訳をしたがる人がいるけど、やはり「石炭をば、はや積み果てつ。」だよな。「石炭はもう積んだ」じゃなあ。
そして、『阿部一族』の厳しさ。鴎外の描写には人名が多い。若い頃は、それが煩わしかったが、それは間違いだった。鴎外は、その一人一人の人生を、死を看取ったのだ。そして、その漢語表現の素晴らしさ。漢籍が身体に染み付いていればこそのものだと思う。それにしても、『阿部一族』『堺事件』『じいさんばあさん』に登場する武士の、凛とした美しさはどうだ。義のために死ぬということに惹かれることが、危険であると自覚しながらも、どうしても心の奥底に響いてくるのを押さえることが出来ない。
大正の人たちの文章は巧みだが、鴎外を読むと(仕方のないことだが)軽く感じる。さすがに国造りに参加した明治人は、骨が太い。
『舞姫』にしろ非道い話だが、国家草創期のエリートとしては、やはり帰らなければなるまい。国を背負う悲壮な自負がそこには存在する。それを抜きに太田豊太郎の苦悩は語れない。
鴎外は、敷居は高いが、でも、読み物として充分面白い。文章にやられ、登場人物の美しさに心を奪われ、展開に引き込まれる。芥川も太宰も荷風も、鴎外に憧れた。私もその仲間に入れてもらえないだろうか。

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