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2015年8月8日土曜日

8月上席 池袋演芸場 夜の部

池袋演芸場、8月上席、といえば、柳家小三治がトリをとる昼の部なんだろうけど、これが凄まじいぐらいの混みようなんだろうな。
何年か前、覚悟して行ったが、1時間前に行ってやっと入れたほど。呼吸するのさえ苦しかった。
まして、小三治は人間国宝になったばかり。市場での小三治株の高騰ぶりは想像に難くない。
いいよ、小三治の高座はこの30年余、結構楽しんだ。今の客に譲るよ。現在の東京落語の最高峰だ。今のうちにしっかり聴いておいてくれ。
私は夜の部、林家正雀の怪談噺を聴くことにする。と思ったら、正雀は休席。隅田川馬石の代バネだった。まあいい。馬石の噺も興味がある。

20分前に演芸場に入ると、ロビーのモニターに小三治が映っていた。ネタは『千早振る』。15年前浅草で同じ『千早振る』を聴いた時には、空席があったっけ。

さて、夜の部が始まる。昼の部とは打って変わって、五分の入り。
前座は柳亭市丸。市丸といっても天ぷら屋じゃあない。(って茨城県鉾田市でしか分からないことを言うな。)ネタは『道具屋』。池袋は持ち時間がたっぷりあるので、前座さんもしっかり噺ができる。固い客だが、いい修業になると思います。
二つ目は春風亭朝之助、『寄合酒』。学生時代のバイトの話がマクラ。ネズミを客の前では「ミッキー」と呼ぶという内容。ふわふわした独特の口調だ。これもお客はぴくりともこない。
昼の小三治よりも怪談噺をとる客だ。普通のくすぐりは聞き飽きているんだろうな。
蜃気楼龍玉が『強情灸』を熱演。すっきりとした口調。「ミネの灸」が出てきたので、古今亭系だなと思ったが、やはり五街道雲助の弟子だったか。丁寧に演っていたけど、やはりウケはこなかった。やっちゃったみたいな顔で引っ込んでいったが、こういう時こそ泰然としていた方がいいと思う。
ここで漫才、ホンキートンク。東京の若手漫才にはこの頃逸材が多い。この人たちもそう。ボケのずれ具合が絶妙。固い客を時間をかけてもみほぐす。やっと客席に笑いがもれるようになった。
ここで三遊亭吉窓登場。桂小文治さんとともに日暮里特選落語会のメンバーの一人。何より明るいのがいい。余裕の『大安売り』。お客を陽気に笑わせて、「なすかぼ」を踊る。
お次は桂才賀。落語協会落語台本応募作品『カラオケ刑務所』。刑務所といえば慰問回数において才賀の右に出る者はいない。デティールの細かさなどは、作者というより才賀本人の工夫によるものだろう。ちなみに「春風亭柳昇師匠の『カラオケ病院』のパクリではなく、オマージュ」とのこと。
翁家社中の太神楽。昨年和楽さんが亡くなり、小楽・和助二人の高座。
仲トリは柳亭小燕枝。彼は、1980年、春風亭小朝とともに真打に昇進した。当時は、36人抜きの小朝の華々しさの陰に隠れた感があったが、それでも実力派という評価は得ていた。歌い調子、古風な風貌は先日亡くなった入船亭扇橋を思わせる。しかし、扇橋が甚兵衛さんや与太郎などでとぼけた持ち味を発揮したのに対し、小燕枝はすっきりとした職人がいい。今日は『小言幸兵衛』。いきなり仕立て屋から入り、サゲまで。もはや寄席の重鎮としての風格を身にまとう。
クイツキは柳家三語楼。最近大名跡を襲名した柳家のホープ。鈴々舎馬風の弟子なのね。柳家のお家芸『長短』をきっちりと演じ切る。華があるな。
柳家小菊姐さんの俗曲でしばし江戸情緒に浸る。
トリは隅田川馬石、『真景累ヶ淵より、豊志賀の死』。これがよかった。豊志賀の情念、新吉の揺らぎ、お久の可憐を見事に描いていたなあ。馬石のハンサムさが、この噺にはよく合っていた。もう少し上下を整理すれば、より噺が引き締まったんじゃないかなとは思うけど、十分客は馬石の世界に引き込まれていたよ。私もそうだった。
お賑やかにかっぽれを踊って終演。追い出しの太鼓を背に外に出る。外は弱い雨が降っていた。
久し振りに寄席を堪能できてよかった。奥さんありがとう。女子会の時は喜んで送迎させていただきますよ。


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