小文治さんからDVDを頂いた。
今回の演目は『片棒』『虱茶屋』『文七元結』の3本である。
『片棒』は、吝嗇な旦那が息子たちに「自分が死んだらどのような葬式を出してくれるのか」と聞く噺。長男は大勢の人を呼び豪勢な料理を出す贅を尽くした葬式、次男はお祭り騒ぎで送り出そうという趣向、当然旦那は立腹するが、三男の提案を聞いて…といった内容だ。
聞かせ所は、次男の祭囃子の描写だろう。小文治さんは音感がいい。祭り囃子のリズム、メロディーが心地よい。それから、何と言っても、山車の上の旦那の人形が動く場面での仕草。見事な人形振りだ。素晴らしい。長年修業した踊りが、ここでも売り物になっている。
『虱茶屋』は、私としては、小文治さんの持ちネタの中でも一押しの噺である。悪戯好きな旦那が、お座敷で芸者や幇間の襟首からこっそり虱を入れる。痒みにもだえる彼らの様子が見せ場だ。特に幇間が踊る場面は最高に面白い。踊りで鍛えられた所作が美しい。
トリを飾るのは『文七元結』。このDVDの目玉だな。大分前、小文治さんが水戸の県民文化センターでこの噺をかけた。あいにくその時は行けなかったのだが、このDVDで観ることができた。
前作の『芝浜』でも感じたことだが、小文治さんの程の良さがいい。きちんと笑いを取りながら丁寧に演じていく。大仰な感動巨編ではなく、あくまで落語として聴かせてくれるのだ。娘お久を長兵衛の連れ子で、おかみさんの実の子ではないという設定。そうだな、この方が、お久の健気さが際立つ。文七に金をやる場面の所作が、またいい。どこか古今亭志ん朝を彷彿とさせる。噺の出所は三遊亭遊三とのこと。ただ、住吉踊りで長年の間志ん朝の一座に参加していた小文治さんだ。志ん朝から受けた影響も決して小さくはないと思う。
こうして、先輩の活躍に触れることができるのは嬉しいことだ。芸術協会内でも小文治さんは、持ち前のリーダーシップを発揮しつつあるようである。健康に留意され、ますますご活躍されることを祈りたい。
4 件のコメント:
12年前の投稿にコメントするのも何ですが・・・
小文治師の虱茶屋は、もう30年前のマリオン寄席で聴きました。先代助六師譲りなのでしょうが、見事にこの噺が後世に伝わったと思います(現助六師は今一つしっくりきません。突然切れそうなオジサン感があるものですから)。
文七元結の出所が遊三師、ということは、噺の構成からしても六代目圓生由来ということでしょうか。遊三師は、文楽、圓生、小さん各師から買われて相当噺をもらっているはずですよね。志ん朝師と同年ですが、本当に貴重な方だと思います。
コロナ以降寄席に行っていません。これはいかんな、と思います。
小文治さんは私の大学時代の先輩で、飲みに連れて行ってもらったり色々教えてもらったり、随分お世話になりました。客観的評価なんかできません。でも、私は小文治さんの端正な程の良さが大好きで、その中でも「虱茶屋」は一押しですね。広小路亭の「小文治の会」で初めて聴いたときには爆笑しながら感動していました。
三遊亭遊三は香盤でいうと、戦後の芸協を支えた、十代目文治、柳昇、小円馬、二代目小南、夢楽、四代目柳好のちょっと下に七代目柳橋、遊三、芝楽、金三が続き、その後に歌丸、小円遊がくるんですよね。この辺りで存命なのは97歳の金三と85歳の遊三。昭和の落語黄金時代を伝えてくれる、本当に貴重な落語家だと思います。
私もコロナ以降寄席に行っていません。この間「小文治の会」に行ってみました。そろそろ寄席も、と思っています。
昭和33年真打昇進組は大好きでした。実は落協より芸協の席に行くことが多かったので。小南、柳好はとりわけ好きです。七代目柳橋も末廣のトリ席に何度か行きました。三木助を一番感じられる人だと思います。三井の大黒、蛇含草、御神酒徳利などが思い出されます。
あと、間に笑三がいますね。まあクサかったけれど、それなりに面白い人でした。昭和30年頃は二代目圓歌門だったので、小学館の文楽全集にある落語協会の寄合の写真にもいますね。
小文治師のトリの時に、是非聴きたいと思います。
私が初めて行った寄席は芸協でしたが、学生の頃は志ん朝・談志にいかれていたので、もっぱら落協でした。
でも文治、柳昇、小南、夢楽、柳好は好きでした。特に夢楽師匠には、落研の技術顧問として大変お世話になりました。
七代目柳橋は、六代目譲りの「長者の風」も「青菜」なんか聞くと感じられます。本当に早い死が惜しまれます。
笑三、確かにクサかった(笑) 年取ってから聞いたら「大師の杵」とか面白かったな。初代三平のネタとか考えていたんですよね。文楽全集に写真、ありましたか。今度見てみます。同年代には「出札口」の右女助もいましたね。
小文治さん、よろしくお願いします。
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