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2011年2月6日日曜日

夢之酒 冬の巻


私が愛読している『酒のほそ道』には、「夢之酒」という巻頭カラーのシリーズがある。そこでは四季折々の旨い酒のシチュエーションが妄想されるのだが、今回はそれを真似てみたい。
小唄の『初雪に』の文句が好き。「初雪に ふりこめられて向島 二人が中に置き炬燵 酒のきげんの爪弾きは 好いた同志の差し向かい 嘘が浮世か浮世が実か 誠くらべのむねと胸」というのだが、いいよねえ。
というわけで、季節は冬だ。
隅田川近くの二階の角部屋。ちょいと寝坊をした朝。やけに表は静か。窓を開けてみると、しんしんと降り積もる雪。
これじゃあ遠出はできないなあ。しょうがない、雪見酒といこう。
湯豆腐に燗酒。湯豆腐はごてごて具を入れちゃ駄目だぜ。鍋の底に昆布を一枚敷いて、その上に豆腐を賽の目に切って入れてくんな。たれはぽん酢じゃなくて、鰹節に生醤油。葱を刻んで入れてくれるとありがたい。
顔を洗って置き炬燵に座ると、酒肴が揃う。
すらりと背の高い白磁のお銚子と猪口。土鍋の中では湯豆腐がいい具合に温まっている。小鉢には鮪のぶつの醤油漬け。
燗は少し熱め。はふはふと豆腐を頬張る。鰹節醤油を、昆布のだしが出た湯豆腐のお湯でうすめる。温めると豆腐の味が濃い。口に含んだ純米酒の香りが、鼻腔の奥に立ち上る。鮪は赤身。醤油につけてあるので臭みはない。山葵をのせてぺろっといく。ねっとりとして旨い。
窓の外には東京の下町の雪景色。いつもは煤けたような街が、お化粧をしたように見える。
小一時間ほど飲み食いして、ごろりと横になる。
もうちょっとしたら、言問橋の辺りまで散歩してみようかねえ。

写真は次男の出産で妻が実家に帰っていた時にやった湯豆腐。こちらはけっこう侘びしいものでした。

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