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2011年12月21日水曜日
写真が好き
実は写真が好きだ。
好きな写真家は、荒木経惟と木村伊兵衛。巨匠なのに軽いとこがいい。
昔、愛読していたマンガがあった。これは売れっ子の小説家でありエッセイストの主人公が、食や車に関する蘊蓄を語り、世相を斬るといった内容だ。
その中に、荒木経惟を戯画化したような写真家を登場させた回があった。その写真家は主人公氏の泊まっていた温泉宿で乱痴気騒ぎをして、主人公氏に一喝されるのだが、その時、彼は写真と絵画とを比較した芸術論をぶつのだね。主人公氏はこんなことを言った。「写真は誰にでも撮れるが、絵はその人だけのものだ。絵の方は芸術だが、写真は芸術とは言えない。」とね。
私はこれを読んで、さすがに底が浅いなと思った。
写真はそりゃ誰にでも撮れる。でもプロの撮った写真は誰にでも撮れるものではない。山岳写真家や動物写真家、戦場カメラマンのような写真を素人が撮れるか。その場に行く、その瞬間を捉えるといったところまでがプロの仕事なのだ。それは文字通り命がけの作業なのだ。そこまで日常と隔絶していなくても、何気ない風景やスナップでも、その切り取り方が違う。荒木や木村の町撮りを見ると、我々が見過ごしてしまう日常を、時に鋭く、時に優しくすくい上げている。彼らの眼は凄いな。モノを観るプロフェッショナルでなければ、写真家になることはできない。
あのマンガの主人公氏、つまり作者は、そこを分かっていない。要は底が浅いのである。写真というジャンルをひとくくりにし、それに全てをかけている人に対するリスペクトがない。そのマンガは、その後、「世相を斬る」というところが暴走し、およそ作品とはいえないものになってしまった。
写真は浅草の観音様の本堂の天井に描かれた仏画。荒木経惟がかつて撮ったものだ。艶っぽいね。荒木が撮ってくれなかったら、きっとその存在に気づかなかったよ。
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