中に入ると、入船亭扇里が『持参金』を演っていた。あんまり、後味のいい噺じゃないけどね。「どこの誰だか分からない子どもより、番頭さんの子ならいいか」ってのが、救いかな。
お次は柳家さん八『替り目』。この人は漫談の印象が強い。落語の方は、柳家らしい、手堅くきっちりした演じ方。決して奇は衒わない。でも、そこはかとなく可笑しいんだよな。
ジャグリング、ストレート松浦。熱演。一生懸命さが伝わってくる高座。
橘家圓太郎は『浮世床』の本の件。年末の末広亭と同じ噺。あの時は、昼飯のビールが効いて気が遠くなってしまったけど、今回は最後まで聴けた。肩の凝らない、まさに寄席の噺。
あした順子はピンの高座。相方のひろしが足を悪くして長期休養中のこと。順子が81歳、ひろしは90歳だっていうからなあ。「男はあなた、ひろし」「女は君さ、順子」と歌いながら踊るのを、前座さん相手にやっていた。その後、ひろしのテープの声に合わせて順子が踊る。順子一人の高座も十分面白かったが、ひろしの復帰を切に願う順子の姿に、思わずうるっときちゃったよ。
柳家はん治『ぼやき酒屋』。お得意の桂文枝ネタ。もうこれは自家薬篭中のものですな。
初音家左橋は、新作の小噺をさらっと演って下りた。
花島世津子のマジック。ほんわかした雰囲気がいい。
待ってました、川柳川柳。おなじみの『ガーコン』だが、サゲの足踏み脱穀機までは演らず、軍歌を歌いまくりジャズを演ってお終い。声量が落ちたね。声は相変わらずいい。セピア色の声ってやつですか。次の台詞がなかなか出てこなくなったけど、川柳師匠、いい齢の取り方してるよねえ。
またまた待ってました、柳家さん喬。ネタは『時そば』。これぞ柳家。いいねえ。この人も寄席の至宝になりつつあるんじゃないかなあ。
仲トリは桂文楽の『看板のピン』。ベテランらしい余裕の高座。
クイツキは柳家禽太夫『もと犬』。この人、よくこの出番で見るんだよね。明るい所がクイツキ向きなのかも。
大空遊平・かほり。おなじみカカア天下の漫才。でも実は仲が良さそうなんだよな。
五明楼玉の輔は新作落語。タイトルは知らないけど、がん告知の噺。前にも聴いたな。この人の洒落た感じはいい。
誰かの代演で林家鉄平登場。『紀州』。相変わらず寄り道が多いけど、地噺だからいいんじゃない。ウケてたし。
膝代わりは、翁家和楽社中の曲芸。
今日の私のお目当ては、トリの柳家喜多八。昭和24年生まれだから、もう65歳になるんだ。虚弱体質を売り物にしているけど、噺には勢いがあるんだよね。風貌は三遊系。写真で見る、四代目三遊亭圓生とか四代目橘家圓喬みたいな感じ。名人っぽい。「落語にちょっと飽きたんだよね」と言って、ネタは浪曲の『清水次郎長伝・石松代参』は三十石船の件を落語に仕立てたもの。あの「江戸っ子だってねえ」「神田の生まれよ」「食いねえ食いねえ、寿司食いねえ」の名場面だ。演芸に対するリスペクトを感じるが、私としちゃ直球勝負の落語が観たかったなあ。ま、こういうちょっとばかり屈折した所がこの人の魅力なんだけどね。寄席の高座は一期一会、その時その時を楽しめればいいか。
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