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2019年5月29日水曜日

浅草演芸ホール 5月下席 昼の部

入ってみるとまあまあの入り。後ろの方に端っこの空席を見つけて座る。
高座には三遊亭たん丈が上がっている。秋田県男鹿市の出身。なまはげの小噺で売り出したい様子。1962年生まれ。42歳で入門し、現在57歳で二つ目か。悔いを残したくなかったんだなあ。頑張ってもらいたい。
お次は三遊亭らん丈。現職の町田市の市議会議員。明るく達者な話しぶり。漫談をやっていたが、内容はよく覚えていない。
林家たけ平。正蔵門下。池袋で見たことがある。明るい芸風で好感が持てる。新作の「織田信長」という地噺。お客を大分温めた。地噺が得意なんだな。前も地噺をやっていた。普通の噺も聴いてみたい。
ここで漫才、ニックスのお二人。姉妹コンビとのこと。姉がクール、妹がよく喋って愛想がいい。私の経験によると、二人姉妹にはこういう取り合わせが多い。
この度めでたく二つ目に昇進した春風亭㐂いち、ネタは『のめる』。一之輔の弟子か。噺の切り口が一之輔に似ている。「意識高い系」という感じ。上手いと思う。
柳家小はん登場。プログラムに名前はない。桂文楽の代演らしい。1941年生まれだから、78歳か。もっと上かと思った。幾分舌はもつれるが、はっきりした口跡で聴きやすい。ネタは「親子酒」。きっちりと演じて、面白い。ちゃんとウケを取っていた。
この辺りでペペ桜井が入ったと思う。曲ごまの三増紋之助の代演。絶滅危惧種のギター漫談。ちょっと喋って「さよならの歌」だけ歌って、あっという間に高座を下りた。前の方に座っていた女のお客さんが「えーっ」と言っていたよ。
三遊亭歌武蔵。黒紋付姿は落語家というより相撲の審判役。武蔵川部屋所属の元力士という前歴はあまりにも有名。同期には貴闘力がいる。お得意の相撲漫談で爆笑を呼ぶ。この日はトランプ氏来日の前日。彼が観戦した千秋楽をテレビで見たけど、異様な光景だったなあ。
ものまね、江戸家小猫。四代目猫八の息子。2009年に入門とあるから、四代目襲名の年だ。スーツでの立ち高座は、四代目の小猫時代を思わせる。精進して、いつか五代目の看板を上げてほしい。
ここで「あやめ浴衣」の出囃子が流れる。私たちの年代では、この出囃子は八代目林家正蔵。そして、現在は当代の九代目正蔵が登場する。かつてのこぶ平ももう57歳になる。落語協会副会長としての貫録もついて、あの気弱ないじられキャラの面影はない。どことなく風格が漂う。大きくなったと思う。小噺の連打で客をつかみ、得意ネタ『味噌豆』に入る。軽い噺だが、小僧も旦那もかわいらしくて楽しい。
正蔵が下りると、今度は「鞍馬」が流れる。「鞍馬」ときたら、十代目金原亭馬生。今はその一番弟子、金原亭伯楽が登場してくる。ネタは『粗忽の釘』。そそっかしい亭主とおかみさんの馴れ初め話がやけに色っぽい。あの桂太も、もう80歳か。声量がだいぶ落ちた。そうなるとウケも薄くなる。この人独特の調子が齢を取るにつれて味が出てきて、よく聴くと面白いんだけどなあ。
ここで曲芸、翁家社中。和助と小花のコンビが務める。ここもすっかり代替わりしたなあ。お二人はご夫婦のようで。仲睦まじさが高座に出ている。いい気分になりますな。
林家木久蔵は『幇間腹』。得意ネタなんだろうな。若旦那がニンに合う。いいとこの坊ちゃんそのまんま。現代的なくすぐりが、浅草の年齢層の高い客には、はじけない。
中入り前は長老、鈴々舎馬風。この人も今年80歳になるんだ。この芝居、ベテランが多いなあ。よちよち歩いてくるが、噺に衰えは感じない。おなじみの漫談で客席を沸かせる。
中入りに高山T君からのメールを見る。無事帰途についたようだ。
さあ後半戦。クイツキは三遊亭天どん。まずは自分の芸名の不満をひとくさり。ま、うちの落研にはもっと前に牛丼がいたけどね。シニカルに次々と話題を変える漫談。ウルトラマン・エースの話が面白かった。
漫才、ホームラン。たにしのボケが最高。自在のコンビネーション。昭和のいる・こいるの全盛を思わせる。
柳家はん治は得意の桂文枝作の新作落語、『妻の旅行』を演じる。ぼやかせたら、この人の右に出る者はいるまい。いい鉱脈を見つけたと思う。
春風亭一朝、『初天神』。さらっとやってるけど、上手いなあ。
膝代わりはアサダ二世の手品。洒脱。今回は手伝わされたお客さんが面白かった。
そして、いよいよトリの三遊亭圓丈。圓丈も今年で75歳か。とんがった新作ではなく、今回は古典の『強情灸』。五代目小さんが売り物にしていた噺だから、師匠圓生はやらなかっただろう。「みねの灸」が出てくるところをみると、出所は古今亭か。サゲは変えてあるが、古典としても骨格がしっかりした噺になっている。高座には小さな見台があって、カンペというかメモというか、マクラではそれを時折見ながら喋っていた。年取って絶句なんかするくらいなら、そんなやり方もありかも、と思いました。
元気いっぱいというわけではない体調で、浅草演芸ホールの「ゆるさ」が、この日は心地よかったなあ。




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