前回の続き。
初席に行こうとは思ったものの、ネットで調べた限りで鈴本はまず無理ということが分かった。検討の結果、上野広小路亭の芸術協会を観ることにする。
ここはこぢんまりとした畳敷きの寄席。定席は芸術協会のみだが、圓楽一門会や立川流も興行を打っている。
入ったのは5時少し前。2部の最後の方だった。正月の寄席の例に漏れず結構な入りだが、壁際のスペースにうまく座ることが出来た。
2部のトリは昔々亭桃太郎。しょうもない駄洒落の連発が癖になる不思議な落語家だ。この日は「長短」をみっちり演じた。サゲ間際で、大声でネタばらしをするおじさんがいる。おれは落語に詳しいんだぞ、というところを見せたいのだろうが、迷惑以外何ものでもない。寄席は気楽でいいが、気楽をはき違えてはいけないよな。
2部終了。入れ替えはなし。かなりの客が帰るが、新たな客が次々に入ってくる。どうやらネタばらしおじさんは帰ってくれたようだ。
すぐ一番・二番の太鼓が入り、3部が始まる。
前座のメクリは「前座」としてある。多分、春風亭昇太の弟子。前座さんらしい「子ほめ」。
二つ目は三笑亭夢吉、「味噌豆」。明るくていい。有望株と見た。
柳亭小痴楽は、小咄をひとつ演っただけで慌ただしく高座を下りる。
桂歌助、「金明竹」。高校の先輩Hさんが、子どもを連れて、やはりこの広小路亭に来た時、出ていたそうで、「歌助面白かった」というメールを頂いた。なるほどいい。言い立ての回数は減らしていたが、しっかりと演じてくれた。
三遊亭笑遊、「不動坊」。熱演だがクサいな。
ここで色物。東京ボーイズ。脱力系だが、これが面白い。のいるこいるの漫才みたいな味がある。
仲トリは古今亭寿輔。大看板の風格が出てきたね。皮肉で屈折した感じがたまらない。「親子酒」。塩辛をつまみに酒を飲むくだりを存分に見せる。今は亡き十代目桂文治の型か。
仲入りで客が減る。仕方のないことかもしれないが、もったいない。寄席はトリまでの流れを考慮に入れて構成されている。トリを聴いてこそ、その流れをきちんと味わうことが出来るのだ。
くいつきは桂枝太郎。懐かしい名前が復活した。当代は、温水洋一を髪の毛を増やして若くしたような好青年。ネタは「動物園」。
そして、桂小文治さん登場。「粗忽の釘」を手堅く演じる。口調は端正だが、軽妙な可笑しさがあって、よく受けていた。
柳亭楽輔、「鰻屋」。実力派だねえ。サゲ際が少しくどかったかな。
膝代わりは松旭斎小天華の手品。程がよい。
トリは三遊亭圓雀。かなり前のことだが、地元の文化センターに小遊三・昇太・山陽などが来た時、この人の「長屋の花見」を聴いて上手いなと思った。その時より痩せて年取ったなという印象。「浮世床」を夢の所まで演じる。結構なものだったが、もうちょっと勝負してもよかったんじゃないかなあ。持ち時間も結構あるし、腕もあるんだから、無理に笑いを取らず、「いいなあ」と客に思わせて帰すというチョイスもあった。その方が、かえって存在をアピールできたと思う。
広小路亭は噺をじっくり聴くのにいい空間だ。初見の噺家さんが割といて、楽しめた。初席の顔見世興行とは違って、しっかり落語を聴くことが出来た。鈴本で小三治が最高かもしれないが、私は満足です。
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