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2014年9月12日金曜日

風柳の根多帳⑦

前回の続き。
本番までにはもう一回、客前で演る機会があった。老人ホームの慰問だ。
慰問とはいっても、目的は発表会の練習。部員ではない、一般の人の前で演ってみることに価値がある。
うちの落研では、成城学園前、駒場東大前、下高井戸の3か所に、それぞれなじみの老人ホームがあった。(「白寿荘」という名前には記憶があるな。多分、これは成城学園前から行った所だと思う。大福さん、メモとってない?)
この時は、仲トリの八海君は就職活動で欠席。4年の真打では、私だけの参加となった。
当然、私は最後に高座に上がったが、この場で『芝浜』という人情がかった大ネタを演るのに気が引けたんだね。『牛ほめ』とか『豆屋』だったら、お年寄りも喜んでくれるだろうに、練習に付き合わされるのは申し訳ないという気が先に立ったような気がする。
「学生の身で、このような噺を演るのは、申し訳ないのですが」というマクラをふって、噺を始めた。やはり出来はよくなかった。
終演後、楽屋で反省会をするのだが、慰問の時は、真打でも参加した全ての者に批評してもらう。
1年後輩のトップ真打、夢三亭小たつ君が、「伝助さんらしくなかったです。」と言ってくれた。「伝助さんは、『おれの噺を聴け』って感じで演んなきゃ駄目です。」
この言葉はありがたかったな。あれで腹がくくれた。自分が演りたい噺を、思い切って演るべきだ。変な遠慮をして、出来の悪い噺を聴かされる方が、よっぽど迷惑なんだよな。
小たつ君はもう一つ指摘してくれた。「伝助さんには、話している途中で舌を鳴らす癖があります。気を付けた方がいいと思います。」
これに関しては、あまりピンとこなかったが、ちゃんと意識しておけばよかった。後で本番の録音を聴くと、確かに、ぴたんぴたんと舌を鳴らす音が聞こえる。演っている時は違和感はなかったが、録音になると、やはり耳障りだった。
人の言うことは、きちんと聞いた方がいい。

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