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2025年12月8日月曜日

ジョン・レノンの命日、ジョンについて語る

野暮用があって、年休を取った。

一日中、猫の相手をしながら、『music magazine増刊 ジョン・レノンを抱きしめて メモリアル・エディション』を読む。この本は2000年に刊行された。1981年2月に発売された『music magazine増刊 ジョン・レノンを抱きしめて』の主要記事と、ジョンの死後20年に新たに書き加えられた記事とで構成されている。

今年はそれからさらに四半世紀が過ぎた。ジョンが死んで45年の月日が流れたことになる。

そして、今日、12月8日はジョン・レノンの命日である。

高山T君は、今年も何かしらジョンについて語っているという。私も何かしら語ってみようと思う。この日ぐらい、ジョン・レノンに思いを巡らせるのもいいではないか。


ジョン・レノンは、45年前の今日、妻ヨーコと帰宅したところで射殺された。

こう書いて、改めてその事実の重さに気づく。ジョンはその人生の最後の時まで、ヨーコと一緒だったのだ。

ジョンとヨーコ。彼らほど様々な批判にさらされた夫婦はいないだろう。

ヨーコの出現がビートルズ解散の原因だったと言う人がいる。ヨーコの存在はジョンの音楽の足を引っ張りこそすれ、何一つ寄与しなかったと言う人がいる。二人の別居時代、ジョンがメイ・パンと恋人関係にあったように、ヨーコもデイビッド・スピノザとよろしくやっていたのだ、と言う人もいる。1980年当時、ヨーコはジョンと離婚したがっていたと言う人さえいる。

前妻のシンシアを追いやる形でジョンと結婚したことからも、ヨーコをよく思わない人は多い。シンシアが美しく慎ましやかな女性であるのに対し、エキセントリックなアーチストであるヨーコは、どこか不気味でやかましくも映ったのだろう。

しかし、ジョンはヨーコを選び、ヨーコとともに生きることを選んだ。

ジョンは父からも母からも捨てられ、母の姉夫婦に預けられて育った。伯母は厳格な人で、厳しく躾けられた。無条件な愛に包まれて育ったわけではない。

最初の結婚は22歳で、それはシンシアが妊娠したからだった。その後、ビートルズは爆発的にスターダムにのし上がり、家庭を顧みる暇はなかった。リバプールの父権社会で育ったジョンは相当な亭主関白だったという。

ヨーコはジョンの7歳年上。自己肯定感の低かったジョンを無条件で肯定した。ジョンは、後にヨーコを「マザー」と呼ぶ。ヨーコの母性に包まれることが、ジョンには必要だったのかもしれない。

ジョンは29歳でヨーコと結婚し、35歳でショーンを授かった。

私は妻と35歳で結婚し、40歳で長男を授かった。農家の長男として生まれ、男性優位社会の恩恵にただ乗りしてきた私は、男女の非対称について、あまりに無自覚だった。妻は、おかしいことはおかしい、ときちんと言う人だったから、色々気づかされた。私は妻と生活することで大人になっていったと思う。

ジョンもまた、そうだったのだろうと今にして思う。ジョンはヨーコに支配されていったと言う人もいるけど、むしろ彼は進んで身を預けていったのではないか。何しろ、ヨーコは妻であるとともに母でもあったのだから。そして、ビジネスは男の仕事、家事は女の仕事などという線引きは溶け去り、ビジネスには向かないと、そちらはヨーコに任せて、自分はショーンの育児を含めた家事に専念することにしたのだろう。男としての面子やプライドなど、ジョンにはどうでもいいことだったのだ。

ポール・マッカートニーが、ある日、ギター抱えてダコタハウスにふらっとやって来た。ジョンは「お互いティーンエイジャーじゃないんだから、来るときには電話一本かけてからにしてくれ」と言ったという。これ、よく分かるなあ。

ヨーコはジョンの音楽に貢献しなかった、と言う人もいる。だが、「イマジン」「ハッピー・クリスマス」「女は世界の奴隷か」「ウーマン」などは、ヨーコの存在なしにはありえないだろう。音楽は人間が作る。ならば、その人格に大きな影響を与えたものが、音楽にまるで影響を及ぼさないということはあるまい。

ジョンが死んだ後、ヨーコはジョンの未発表音源を次々と世に出してくれた。もちろん、それはビッグビジネスで、莫大な収入にもなっただろう。でも、おかげで私たちはより多面的なジョンの魅力を知ることができた。中にはレコードテイクよりも素晴らしい演奏を聴かせてくれる曲も少なくない。ヨーコさんには深く感謝したい。


ジョン・レノンは1940年生まれ。日本で言えば昭和15年。戦中派の一人だ。ジョンが生まれた頃、イギリスはナチスドイツによる激しい空爆にさらされていた。イギリスではジョンのひとつ上の代まで兵役の義務があった。そう考えれば、ジョンにとって、やはり戦争は切実な問題で、「イマジン」の世界は決して絵空事ではなかったのだろう。

覇権国家の復活、ただ威勢のいいだけの言葉、声を上げる者への揶揄冷笑・・・、世の中は間違いなく危険な方向に向かっている。ここにジョン・レノンはもういない。自分たちで何とかしなくてはならないのだ。

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