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2017年9月11日月曜日

「あなたが選ぶ『懐かしの名人十八番集』」 八代目桂文楽編

昔、深川書房という出版社で出していた『落語界』という雑誌があった。
その昭和50年(1975年)11月に発行された「11月晩秋号」は、「八代目桂文楽特集号」でもあった。それがこれ。


以下に記したのは、その中の「特別企画/あなたが選ぶ『懐かしの名人十八番集』」、文楽の持ちネタの人気投票の結果である。
では、文楽の死から4年後の時点でのランキングを見てみよう。

① 明烏 176 票  
② 寝床 118 票  
③ 船徳 114 票  
④ 富久 109 票  
⑤ 愛宕山 69票   
⑥ 鰻の幇間 52 票  
⑦ 酢豆腐 37 票  
⑦ 素人鰻 37 票  
⑨ 厩火事 32 票  
⑩ 悋気の火の玉 27 票  
⑪ 馬のす 23 票  
⑫ 心眼 19 票  
⑬ 景清 16 票  
⑭ よかちょろ 15 票  
⑮ つるつる 14 票  
⑯ 大仏餅 13 票  
⑰ 厄払い 12 票  
⑰ 松山鏡 12 票  
⑲ かんしゃく 10 票  
⑳ 星野屋 9 票  
㉑ 按摩の炬燵 8 票  
㉒ やかん泥 7 票  
㉒ 夢の酒 7 票  
㉔ 干物箱 5 票  
㉕ 王子の幇間 4 票  
㉖ しびん 3 票  
㉖ 締め込み 3 票  
㉘ 穴どろ 1 票

第1位は、自他ともに認める十八番、文楽の代名詞とも言える『明烏』。2位の『寝床』に60票近くの差をつけての圧倒的な支持を得た。
やはり上位はトリネタが続くな。一人一編だけを選ぶというやり方だったということも結果に影響したのだろう。私が投票するとしたらと考えると、迷うなあ。せめて三編ぐらい選ばせてほしい。

これとは別に、橘左近、保田武宏、沢田一矢の対談の中で、各々「お好みベストテン」(順不同)を選んでいる。ついでにそれも紹介してみよう。

【橘左近】明烏 寝床 鰻の幇間 富久 よかちょろ つるつる 王子の幇間 馬のす 船徳 悋気の火の玉
【保田武宏】明烏 寝床 船徳 心眼 愛宕山 鰻の幇間 悋気の火の玉 よかちょろ やかん泥 しびん
【沢田一矢】よかちょろ 馬のす 明烏 酢豆腐 富久 鰻の幇間 厩火事 心眼 つるつる 船徳

3人とも選んでいるのが、『明烏』『寝床』『鰻の幇間』『よかちょろ』『船徳』の5席。ファン投票でもベスト3に入った『明烏』『寝床』『船徳』がここでもランクインしている。
対談の中では「嫌いな噺」というのも話題になっていて、沢田は『素人鰻』、左近と保田は『按摩の炬燵』を挙げている。
今、こういう企画をやったら、きっと立川談志の影響で、好きな方に『よかちょろ』とか『王子の幇間』が入り、嫌いな方に『大仏餅』辺りが入ってきそうだな。談志という人は優れた目利きでもあったが、いささか独善に走るきらいがあり、しかも影響力が強いのが困りものだ。何しろ「(文楽の噺では)『よかちょろ』『王子の幇間』を取る者が落語の理解(わか)る奴であり・・・」なんてことを言うんだもの、どうしたってバイアスがかかる。談志から自由になることも必要なんじゃないのかな。

では、せっかくだから、私のベストテン(順不同)もやってみましょうかね。

・景清(圧倒的な描写力。特に夕立の場面の迫力は凄い)
・夢の酒(お花の可憐さが炸裂、大旦那の慈愛の眼差しが浮かぶよう)
・寝床(言い古されてはいるけれど、旦那の心理描写が絶妙)
・締め込み(文楽との出会いの噺。惚れあっているが故の夫婦喧嘩にやられる)
・船徳(親方の船頭への小言の場面の、文楽の素っ頓狂な声が大好き)
・愛宕山(いきなり春の野山に連れて行ってくれる演出が鮮やか)
・素人鰻(文楽自身没落士族の一人。後半のドタバタが可笑しくも哀しい)
・富久(実は「しょんべんして寝ちゃおッ」が最高)
・つるつる(幇間の悲哀を描ききる。晩年のサゲをカットしたバージョンが好き)
・明烏(やっぱりこれは外せない。中学3年の私の心を鷲掴みにした噺)

うーん、『心眼』『よかちょろ』『かんしゃく』『馬のす』『鰻の幇間』『厩火事』『干物箱』・・・、他にも、もっともっと入れたい噺があるなあ。とても10席じゃ足りないよ。



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