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2012年5月20日日曜日

川崎の一日

大学の頃、人の家を泊まり歩くという「中原中也的生活」をしていた、と以前書いた。
でも、川崎のアパートは好きだった。特に一人で酒を飲むようになると、ちゃんと帰ることが多くなった。(勝手なもんだ。)
川崎の朝は遅い。と言っても、私が起きるのが遅いだけだ。
私が起きるのは、申し訳ないが、お天道様が大分高く上がってからだ。 起きると、まずお湯を沸かし、ほうじ茶を淹れる。炬燵の上には、中学の卒業記念品の笠間焼の湯呑が置いてある。大振りで使い勝手がよく、コーヒーでもお茶でも酒でも、この湯呑で飲んだ。
蒲団は敷きっぱなしの万年床。起き上がると、座布団として使った。 ほうじ茶を飲みながら、まずは目覚めの一服。当時はマイルドセブンを吸っていた。
ちょっとばかりうだうだして、朝食兼昼飯を食べに表へ出る。 アパートの前は狭い路地だ。向かいは、何かの作業場になっているらしく、いつもグラインダーの音が聞こえた。
大通りへ出る。飯屋の持ち駒は三軒ほど。最初の大きい交差点の角にある、中華料理の「ちづる」、そこを渡って少し歩いた所にある、南河原銀座商店街入り口向かいの「角屋食堂」、それから、商店街の中にある「たまるや」という蕎麦屋だ。 「ちづる」ではラーメンライス、「角屋食堂」ではメンチカツ定食、「たまるや」ではカツ丼をよく食べた。どこも500円も出せばお釣りが来た。とんでもなく旨いという訳ではなかったけど、落ち着けて好きな店だったよ。
腹がいっぱいになるとぶらぶら散歩をしながら、本屋をひやかす。本屋の名前は忘れたが、「ちづる」と南河原銀座の中間ぐらいにある店と、南河原銀座の中にある店が馴染みだった。
このどちらかで、フォークシンガー友川かずきのエッセイ『死にぞこないの唄』を買った。奥付の著者紹介には、友川の住所が掲載されていた。(今の時代じゃ信じられないことだけどね。)これが、うちのアパートのすぐ側。番地が1しか違っていなかった。この時はすごくコーフンしたなあ。
この頃は、マンガに凝っていたので、掘り出し物があるとせっせと買った。当時は個人商店でもけっこうマニアックな本があったのだ。
つげ義春の『必殺するめ固め』『夢の散歩』、吾妻ひでおの『不条理日記』、いしかわじゅんの『憂国』『蘭丸ロック』なんてところを熱狂して読んだ。また、女流では高野文子が『絶対安全剃刀』、近藤ようこが『月夜見』で鮮烈な単行本デビューを果たしていたし、マンガ雑誌では『マンガ奇想天外』『ひゅーじょんぷろだくと』なんてのがあって、マンガがとんがっていた時代だった。
散歩から帰り、四畳半のアパートでそういった本をむさぼり読んでいるうちに、やがて日は暮れていくのであったね。

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