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2013年10月29日火曜日

朝寝朝酒朝湯が大好きで

「会津磐梯山」という民謡がありますね。その中に、「小原庄助さん」の件がある。「小原庄助さん 何で身上潰した 朝寝朝酒朝湯が大好きで それで身上潰した もっともだもっともだ」ってやつ。(これはもう、日本版の見事なラップですな。)
会津若松市の酒蔵では見学用のスペースに、「あなたの小原庄助さん度 診断テスト」のチャート表がある。私はもちろん「満点小原庄助さん」だったが、確かに、一般人が「朝寝朝酒朝湯が大好きで」なんて言ってちゃ駄目だよな。
でもね、これが許される商売がある。それが芸人さんなんだね。
柳家小満ん著の『べけんや―わが師桂文楽』の中で、黒門町の朝食の場面が生き生きと描かれる。これがいいねえ。
朝湯にゆっくり浸かった後、ご先祖様と神棚にお参りして、肌のお手入れをして、食卓につく。卓袱台の脇には、師五代目柳亭左楽に貰った長火鉢。(現在、その長火鉢は当代の文楽が引き継いでいる。)その張り出しの部分で飲み食いができるようになっていた。
まずは燗酒。鯛や平目の刺身をつまむ。夏場は黒ビールと洒落こんだ。文楽という人は、平素は洋装を好んだこともあり、けっこうハイカラだったのかもしれない。
お銚子で2本ばかり飲んで飯にする。文楽は大振りの染付茶碗に、ふわりとよそうのが好みだった。(これは七代目橘家圓蔵師を通して、我が落研の飯のよそい方に伝わった。)味噌汁は、豆腐、わかめ、大根がローテーションの中心。刺身などのおかずで2、3膳食べた後、佃煮かお新香でもう1膳食べた。五代目小さんは、「白菜のお新香の葉っぱのとこで飯をくるっと巻いて、何杯でも食べるんだ。面倒臭くなって山盛りで出したら、『君ねえ、おまんまってのは、ちょこっとよそうから旨いんですよ。』って言われたよ。」と語っている。
飯が終わると果物を食べ、その後で和菓子を食べた。食後の一服の煙管を灰吹きでコーンと叩いて、朝食が終わる。小満んは「芝居の一場面のようだった」と書いている。確かに読むだけでうっとりしてしまう。
古今亭志ん朝は、明け方にウィスキーを飲むのが好きだったという。「世間ではまた忙しい1日が始まる。それを自分はウィスキー片手にほろ酔い気分で眺めている。何かこうちょいと申し訳ないような、ちょっと得をしたような、何ともいえないいい気分がしているうちとろとろっとしてきて、」なんてことを雑誌のインタビューで言っているけど、これもまた羨ましいねえ。
私がやるとしら湯豆腐がいいね。旅館の朝飯で湯豆腐が出るたび、「ああ燗酒が欲しい」って思うもんなあ。ただ、私の場合、酒を飲むと飯を食わないので、朝から本格的に飲み出しそうで怖い。それに、ほんとに朝寝朝酒朝湯なんてことしてたら、私の身上なんてあっという間に潰れちゃうよな。

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