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2010年11月10日水曜日

浜川崎線


大学の頃住んでいたアパートから歩いて20分位の所に親戚の家がある。
当時、私は月に1、2回そこに行って、夕食を食べさせてもらったり、風呂に入れてもらったりしていた。
東芝の工場の間を抜け、南武線、東海道線、京浜急行の踏切を渡って、八丁畷の駅前を通っていく。人通りはほとんどない。私はそんな時、歩きながらよく落語の稽古をしていた。時間的にもちょうどいいし、歩きながらぶつぶつ口ずさむ稽古が、なかなか身に付いてよかったのだ。
親戚の家からの帰りは、八丁畷から浜川崎線の電車に乗った。
八丁畷は、京浜急行と浜川崎線が交差している所にあり、京浜急行のホームをまたぐ跨線橋がそのまま浜川崎線のホームになっているという、いささか変わった造りの駅である。その昔、小津安二郎監督の『お早う』という映画のロケで使われた。ビデオで見る限り、駅自体はほとんどそのままといった感じ。戦後の匂いがぷんぷんする。
思い返すと、なぜか冬の印象が強い。ホームにはいつも私一人。寒さに背を丸めて電車を待っている。工場地帯の方角から、ヘッドライトが見え、やがて茶色の電車がやってくる。
電車は2両編成。戦後間もなく国電で使っていた旧式の車両だ。床は板張り。よく揺れた。
椅子に座ると、暗い窓ガラスにしけた私の顔が映り、その向こうに川崎の夜景が見えた。アパート最寄りの尻手まで、たった一駅だったが、いかにも侘びしげで、私はこの電車に乗るのが好きだった。
あれからもう30年か。思えば遠くへ来たもんだ。
写真は現在の浜川崎線の電車。すっかり小ぎれいになったねえ。創設80周年のヘッドマークが誇らしげだぞ。

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