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2011年7月27日水曜日

四代目春風亭柳好

どこで出しているんだろう、落語名人選とかいうシリーズがあって、よくホームセンターなどのワゴンセールでバラ売りをしているのを見かける。このラインナップがなかなか個性的なのだ。四代目三遊亭圓馬、二代目桂小南、四代目春風亭柳好、四代目三遊亭右女助ってところなんざ、なかなかにシブい。二代目桂枝太郎なんか堂々と「桂梅太郎」と間違った名前のまま、随分長い間売っている。(どこからもクレームが来ないんだろうか。)
私も以前これにハマって、近くのカインズホームへ行くたびに、せっせとカセットテープを買ったものだ。
この中の、四代目春風亭柳好の演目は『牛ほめ』と『道具屋』の2本であった。収録されたのが両方与太郎ものというのも普通ではない。それほど、この人の与太郎はニンに合っていた。
柳好というと、三代目の、「野ざらしの柳好」が有名だ。若いうちから「睦会の四天王」として売れに売れ、華やかな謡い調子の高座は、多くの人を魅了した。
その次の柳好がこの人である。師匠でもある三代目が、全編粋で固めたような芸であったのに対し、幾分地味で、幾分野暮ったかった。だからといって、売れていなかったわけではない。「お笑いタッグマッチ」というテレビ番組で売り出し、芸術協会の寄席には欠かせない存在だった。
私は、高校入学前の春休み、初めて寄席に連れて行ってもらったが、その時、この柳好が出演していた。演じたのは『道具屋』。私は文字通りひっくり返って笑った。子ども心に私は、柳好を「与太郎が面白い人」として、しっかりと記憶した。(同様に、八代目雷門助六は「踊りの上手い人」、六代目春風亭柳橋は「えらい人」であった。)
特に熱心なファンであったわけではない。でも、何となく好きな落語家だった。最初の出会いがよかったこともあったし、そのほんわかした飄々とした佇まいに惹かれたのだ。(私は華麗な楷書の芸が好きだが、この「飄々」にも弱いのだ。)もちろん、ワゴンセールでこのカセットを見つけたときは、ためらわず購入した。
川崎区渡田に住んでいたので、楽屋では「川崎の師匠」とか「渡田の師匠」と呼ばれていた。京浜工業地帯に住む落語家の師匠というのもユニークだ。(三代目が、向島という粋そのものの場所に住んでいたのとは、これも対照的ですな。)大学時代、私は川崎駅を挟んで反対側の幸区に住んでいた。私が、ちょっと長い散歩をすれば行けるような所に、柳好はいたのだ。
晩年は協会のゴタゴタに嫌気がさし、体を壊したこともあって、芸術協会を脱退した。酒乱であったとも聞く。ただのほんわかした人じゃなかったんだな。何かしらの屈折が柳好にはあったのだ。
もうちょっと聴いておけばよかったな、と今さらながらに思う。

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