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2017年7月2日日曜日

休日の午前、『ジョンの魂』を聴く

朝、TVドラマ『ひよっこ』を観ていたら、茨城の兄ちゃんが「ビートルズっつーのは、自由に自分の思ったことを叫んでっから、いいんだ。『仕事休みてー』とか『好きだー』とか、な」と言っていた。
そして、その初期のビートルズの中心で叫んでいたのが、ジョン・レノンだったことに思い当たる。ジョンのシャウトが聴きたくなって、『ジョンの魂』をターンテーブルに載せ、針を落とした。物置から持って来た、昔買ったLPレコードだ。保存があまりよくなかったせいか、2回ほど音飛びがしたが、それでも圧倒されたな。

1970年発表。ビートルズ解散後の、ジョン・レノン初のソロアルバムである。
いわゆる「私小説」的な作品。スターとしての虚飾を剥ぎ取り、幼児期まで遡った苦悩や感情をありのままにさらけ出したロック史上に残る名作、と言われる。
ギター、ベース、ドラム、ピアノというシンプルな構成。しかもドラムはリンゴ・スター。リンゴの重厚なドラムが、このアルバムのサウンドの背骨となって、そこにジョンの奔放なギターが絡むのだから、堪らない。ジョンのボーカルが、甘く、鋭く、切なく響く。裏声やかすれ声も駆使し、改めて聞くと、ジョン・レノンがとてつもなく巧い歌手であることが分かる。
冒頭の『マザー』でジョンは、「母よ、私はあなたのものであったが、あなたは私のものではなかった」「父よ、あなたは私を捨てた、私はあなたを捨てなかったのに」と叫ぶ。しかし、ジョン自身も、妻シンシアと息子ジュリアンを捨てて、オノ・ヨーコに走ったのだ。全くどの口が言うのか、と思わざるを得ない。そこをジョンは圧倒的な歌唱でねじ伏せる。そして、そうか、ジョンは「火宅の人」であったのか、という新たな感慨が立ち上ってくる。
『ワーキング・クラス・ヒーロー』、『ラヴ』といった名曲や『リメンバー』や『ウェル・ウェル・ウェル』といったハードなロックもいいが、『ホールド・オン・ジョン』、『ルック・アット・ミー』などの小品もいい。楽曲の1つ1つが粒立っている。
そして、このアルバムのクライマックスをなす『ゴッド』。「神はひとつの概念である。私たちの苦痛を測るための。もう一度言おう。神はひとつの概念である。私たちの苦痛を測るための。」・・・突き放すようにジョンが歌い出す。ビリー・プレストンのピアノが素晴らしい。ラストは「私はビートルズを信じない」「夢は終わった」・・・まさにビートルズ神話にとどめを刺す。
だけど、よくよく考えると、録音はアビイロードスタジオ、ドラムはリンゴ・スター、ピアノに『レット・イット・ビー』セッションのゲストミュージシャン、ビリー・プレストンだ。ポーカルはジョン一人。ヨーコの声はバックコーラスにも入っていない(ここ重要)。まるでジョンによるビートルズの再現ともいえる演奏なのだ。
一発録りのようなシンプルな構成で、荒削りなように見えるが、実はかなり完成度の高いアルバムなのではないだろうか。
改めて思う。やっぱり、ジョン・レノンはカッコいい。

このアルバムジャケットも名作だと思う。

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