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2017年11月18日土曜日

牛堀を歩く

先日、潮来市牛堀をぶらついた。
合併前は行方郡牛堀町。霞ケ浦と波逆浦を結ぶ北利根川沿いにあり、昔から景勝地として知られた。特に葛飾北斎が描いた「富嶽三十六景」の「常州牛堀」で有名。(それに因んで水郷北斎公園という公園がある。)川瀬巴水という大正、昭和初期に活躍した浮世絵師も牛堀を題材にした何種かの絵を残している。
土浦と潮来を往復していた定期船は、この牛堀にも停まった。壇一雄の『火宅の人』では、主人公と愛人の女優が別れ話をしに、小旅行にやって来る場面がある。これがいい。以下引用してみる。
「私達の様子がおかしかったせいか、牛堀の宿の女中達もよそよそしかった。刻々暗くなってゆく湖面の見渡せる部屋に、料理とビールだけを放り込むようにして去ってゆく。
 (中略)
 暗い水面は何も見えないが、そのひろがりだけはしかと感じられる。そのひろがりに向って飲んでいると、幼年の日から今日迄のとりとめのない自分の生涯が思いおこされて、空々漠々、一体、何のよりどころを持ちながら生きてきたと云えるのだろう。
 おのれを放ったこのどえらい天然の旅情にだけは忠実であれと、長年自分に云い聞かせてきたつもりであったが、今はたどたどしく、一女性の肉感にすがりついているようなものだ。
 どこかで船の発動機の音が湧く。その音が次第に遠ざかる。音もない茫々とみじめに暗い湖の面が、その湿気を息長く吹きよせているだけだ。何かヒキ蛙の啼き声に似た幽かな声がいつまでも聞こえている。
『いいお風呂よ。入って来ない?』
 私はいつのまにか帰ってきていた恵子の声に、にわかに雨戸を立てて、男の不実をなじりながら涙するこの湯上りの女の肌に、がむしゃらにしがみついてゆくのである。」
 
水郷北斎公園の駐車場に車を止め、歩き出す。
川沿いにはテントが立ち並んでいた。何かウォータースポーツの大会をやっているらしい。
それを横目で眺めながら川沿いを歩く。北斎や巴水の描く情景が、眼前の風景に重なる。






路地を入って、街並みを愛でる。




飲み屋さんだったのだろうか。



古い理容店を見つける。

いいなあ。


1時間近く歩いたかな。往時を偲ばせる建物がそこここに残る。歴史のある街だなあと思います。

牛堀町当時のマンホールの蓋を見つけた。

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