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2018年1月12日金曜日

『SIGHT』最新号を待つ

雑誌『SIGHT』を読んでいたら、巻頭言に渋谷陽一がこんなことを書いていた。
ちょっと引用してみる。

   *  *  *

(略)自民党は圧勝した。たくさんの議席を得た。そして選挙は結果がすべてである。しかし、だからといって安倍自民党が国民に圧倒的な支持を受けているかといえば、そんなことはない。投票率は約半分だし、そのうちの半分からしか自民党は票を得ていない。そして安倍政権の進める政策、(略)どれも賛成する人より反対する人の方が多い。自民党の一強支配、右傾化する世論、といった言葉がメディアには溢れているが、僕はまったくそうは思わない。安倍政権、自民党政権の支持基盤は脆弱だし、世論は右傾化などしていなくて、冷静である。
 僕が危険だと感じるのは、事実とは違う自民党の圧倒的な強さ、右傾化する日本という言葉が氾濫することによって、まるでそれが事実のような気分として国民の常識を支配していくことだ。(略)
 言うまでもなく、「自民党は圧倒的に強い、日本人は右傾化している」といった気分の蔓延を喜ぶのは、低い投票率で大きな勝利を手にした自民党だし、安倍政権である。彼らはその気分が大切なことをよく知っている。あの強引なタイミングで総選挙を断行したのは、もっと遅れると勝てなくなる、という冷静な判断があったからだ。自分たちの政権基盤がそれほど強くないことを知っているのである。

   *  *  *

昨年秋の衆院選についての記事かと見まごうばかりだが、実はこれ、2015年の総選挙後のものなのである。
強引なタイミングでの解散、低い投票率、政権への批判票の分散・・・、同じことが同じように繰り返される。このままずっと「何も変わらない」というニヒリズムだけが蓄積されてしまうのだろうか。
とはいえ、この分析は的確だし、現政権の痛い所を突いていると思う。だからこそ彼らは、ヒステリックに、執拗に、批判する者を攻撃するのだ。
渋谷陽一は、この記事をこう締めくくる。
「自民党の巧妙さはそうしてどんどん鍛えあげられている。そのいちばんの成果が前回の総選挙だった。たいした支持もないのに彼らは多くの議席を手に入れてしまった。それに対抗するには、より優れた歌詞とメロディーを持つ、時代に合った歌を作らねばならない。」
新しい「歌」は生まれつつあるのだろうか。
衆院選以後も、雑誌『SIGHT』は沈黙したままだが、いずれ渋谷陽一は何かを語り出すだろう。私は最新号を心待ちにしている。


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