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2018年10月8日月曜日

池袋演芸場10月上席 昼の部

さて、池袋演芸場昼の部に入る。
お客の入りは五分といったところ。中高年の男性が多い。
前座は柳家寿伴。柳家三寿の弟子。ネタは『狸札』。近頃の前座さんは皆そこそこ上手い。破綻はない。でも前座らしい若々しさに欠ける気がするんだよなあ。
お次は林家つる子。正蔵門下の二つ目さん。ここで『皿屋敷』が出る。二つ目で早くもトリネタかあ。お囃子さんまで使って幽霊出して。女の子らしい可愛いお菊さんだった。人気が出て、客に愛嬌を振りまくのではなく、「芸がクサくなった」という演出。これもよろし。ただ、寄席全体のバランスでいうと、どうなんだろうな。昔なら「ここでやる噺じゃないよ」と小言を食ったりするのではないだろうか。
ここから真打。桂三木助が登場。先頃真打に昇進し、五代目を襲名。彼が三代目の孫、四代目の甥であることは、落語ファンにはよく知られている。ネタは『時そば』。三代目の得意ネタだ。四代目も似てたけど、五代目も三代目によく似ているなあ。表情なんか古い写真で見る三代目にそっくり。四代目は重圧に苦しんだけど、当代は敢えて三代目の演出を軽やかに取り入れてもいいんじゃないかな。『時そば』なら、ちくわぶでもって「月が透けて見えら」なんて演ってくれると嬉しくなるんだが…。結構な出来でした。
昭和こいるが一人で高座を務める。相方の、のいるは入院中。あした順子と組んで漫才を演ることもあるが、この芝居は漫談での出演。師匠の、獅子てんや瀬戸わんやの思い出話など、笑いははじけないが楽しい高座だった。でも、「へーへーほーほー」言う、あの無責任な暴れっぷりは一人高座じゃ無理なんだなあ。
ここで川柳川柳が登場。ネタはおなじみ『歌は世につれ』。ああ川柳、老いたなあ。声は出ないし、話は同じところをぐるぐる回る。あれほどクリアだった川柳の頭脳も、老いは濁らせてしまうのだなあ。「月月火水木金金」、「ルーズベルトのベルトが切れて…」、「出て来いニミッツ、マッカーサー…」を2回ずつ歌う。どうやって終わるのかな、と思っていたら、前座が高座に現れて「師匠お時間です」と告げた。三代目小さんの晩年を連想する。
林家源平が沈んだ客席を盛り上げようと奮闘。海老名家のマクラを振った後、『蝦蟇の油』を熱演。所作がきれいだった。
ホームランの漫才。一挙に笑いがはじける。どこまでがネタで、どこまでがアドリブやら。自在に高座で遊ぶ感じがいい。ふと昭和のいるこいるの全盛期を思い出す。
柳家さん生は『浮世床(下)』。61歳になるのか。いちばんの聴き時ですなあ。日大芸術学部の出身。高田文夫、故古今亭右朝の後輩で、柳家喬太郎、立川志らくの先輩。とにかく自分の言葉で喋っているのがいい。スケールが大きい落語家さんだと思います。
蝶花楼馬楽は『寄合酒』。久し振り。花蝶の頃によく寄席で聴いた。もう70歳になるんだな。まだまだ元気。枯れてない。
林家二楽の紙切りが入る。「池袋演芸場のお客のリクエストは難題が多い」と言う。今回のお題は、石川五右衛門とウルトラセブン。合間に若手時代のエピソードを喋る。語りが面白いし達者だね。
中トリは古今亭志ん輔。『巌流島』。昔は寄席でよくかかったネタだ。軽快に噺は進む。すっとぼけた軽みが持ち味。若侍や乗り合わせた町人たちはニンに合っていたが、年寄侍の方は、もうちょっと重々しくてもよかったか。好きな噺が聴けてうれしかったな。
ここで中入り。
クイツキは八光亭春輔。クイツキ向きじゃないと思うけど、『ぞろぞろ』で客を引き込む。口調は八代目林家正蔵そっくり。しかも『ぞろぞろ』は嬉しい。71歳。頭髪は真っ白になったが、それが貫録を生み、安定の高座。その昔三遊亭圓生に酷評されたが、上手いと思うよ。噺を終えて、かっぽれを踊る。藤間流の名取でもあるんだね。いいもん見さしてもらいました。
プログラムではクイツキだった蜃気楼龍玉がここで登場。『強情灸』。得意ネタなんだな。威勢のいいあんちゃんがニンに合う。女の年恰好を言うくだり、「歳の頃なら二十七、八。…」が『浮世床』とかぶった。
膝替わりは立花家橘之助。初代は女大名と言われた大看板。昨年、三遊亭小円歌が襲名し、82年ぶりに復活した名跡である。小円歌時代と変わらず、ちゃきちゃきとした小気味のいい高座。とはいえ橘之助のお家芸「たぬき」はしっかり演る。
そして、いよいよお目当て、トリの柳家小満んが高座に上がる。八代目桂文楽の人と芸を今の世に語り継いでくれる人。彼の著書『べけんや』は黒門町ファン必読の書である。文楽最後の高座を見届けた前座小勇も、もう76歳になりましたか。
芸の方は、二人の師、文楽と五代目柳家小さんの薫陶を受けた。文楽の上品な色気と小さんの恬淡さを併せ持つ。
酒飲みのマクラを振り始める。若山牧水に李白、正岡子規が出てくる。文芸調だねえ。『猫の災難』かなと思っていると、『試し酒』に入っていった。これも小さんの得意ネタ。小さんよりむしろ抑えた演出。下男久蔵が洒脱すぎやしないか。しかしこれが心地いいんだな。どっぷりと小満んの世界にひたる。

追い出しの太鼓を背に、池袋駅前の三福に飛び込んで燗酒を飲む。旨いねえ。充実の休日でありました。



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