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2012年1月16日月曜日

尾崎紅葉『金色夜叉』

明治のベストセラー。
あの熱海の海岸、貫一お宮の別れの場面は、あまりにも有名だ。昔、百面相の波多野栄一が寄席でよく一人芝居をやっていたな。
お宮と別れた貫一は姿をくらまし、高利貸しの手代となって金銭の鬼となる。明治の人は、高利貸しをアイスクリームと呼んでいたんだね。氷菓子(こおりがし)の洒落なんだそうだ。
高利貸し仲間の満枝と、富山との結婚に後悔し貫一への想いを募らせるお宮。二人の愛を頑なに拒む貫一。その三角関係を中心に波乱万丈のストーリーが展開される。
それにしても高利貸しって職業、えらい言われようだなあ。(鷗外の『雁』のお玉の旦那も、『ヴェニスの商人』もそうか。)ほとんど鬼畜の所業みたい。まあそれほど高利貸しに苦しめられた人が多いんだろう。おかげで貫一は旧友に証文は強奪されるは、暴漢に襲われ重傷を負うは、次々に厄災に見舞われる。挙句の果てに、主人の鰐淵夫妻は客の母親の放火により非業の死を遂げてしまうのだ。
雅俗折衷の絢爛たる文体、漢籍の素養のない現代人には読みづらいな。私も若いうちだったらきつかったろう。でも、講談みたいで楽しいぞ。
終盤には塩原温泉郷の畑下が出てくる。ここは以前T君と行ったことがある。私たちが泊まった旅館から、もうちょっと川沿いのところに、その舞台となった清琴楼がある。瀟洒でいい感じの建物だったな。当時、紅葉には俗物のイメージがあって関心はなかったけど。
硯友社の大立者。その門下からは、泉鏡花、徳田秋声を生んだ。長者の風があるが、死んだのは37歳。貫一お宮の行く末を、満都の読者に気を揉ませながら、未完のまま逝ってしまったんだな。
私も紅葉の早逝を惜しむ。ああ、続きが読みたいなあ。

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