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2012年1月25日水曜日

落研の合宿②―シャレの諸注意―

入部して間もなくの春合宿のことだった。先輩たちの中で不穏な空気が漂っていた。「…の部屋で」「誰から呼ぶ?」などと小声で話し合う様子が、何かを思い出させた。
そうだ、中学校の時の野球部で、ヤキを入れられる前がこんな感じだった。ヤキ入れるというのは、暴力的な説教である。野球部ではバットを何本も並べた上に正座させられる。しかも足の間に1本バットを挟んでだ。これが痛い。説教が済むと、一人一発ずつビンタをもらう。嫌な思い出だ。
まさか大学のクラブ活動でヤキはないよな、と思いながら、何があるのが分からないのが落研だ、油断はできないという不安もあった。
部屋で4年生のいるかさん(いるかさんは、この合宿で真打に昇進され、四代目夢三亭一生楽を襲名した。)に、「今夜なんかあるんですか?」と聞いてみた。「先輩たち、様子が変ですよね。」
いるかさんは、最初ははぐらかしていたが、そのうちこんなことを教えてくれた。「実は“シャレの諸注意”というのがある。まあ説教だが、シャレだ。皆集まっている部屋に呼ばれてがんがん説教される。その後で『シャレだよ~』みたいな感じで皆で笑うんだ。」
そして、ふと思いついたように言った。「そうだ、お前、『シャレだよ~』になる前に、『こんなのやってられません』って言って、部屋を飛び出せ。うちの部屋に来て、泣き真似してろ。皆驚くぞ。」
私はびっくりして言った。「そんなことできませんよ。」
「いいからやれ。ここまで教えたんだ。絶対やれよ。」いるかさんは、ちょっと怖い顔で言った。
やがて、先輩が私を呼びに来た。私は緊張して、先輩方が集まる部屋に入った。まさに前門の虎後門の狼であった。
やったかって?やりました。もう必死だった。「こんなのやってられません!」と言って、無我夢中で部屋に戻り、突っ伏した。私の番が最後だったこともあり、説教もみっちりやられたから、リアリティーもあったのだろう。4年生の女の先輩が「伝助、これはシャレだから。」と言って必死に慰めてくれた。
堪らなくなって、「いるかさん、どうしましょう?」と助けを求めた。
芝居だということが分かって、わっと受けた。ドッキリに逆ドッキリで返すのは面白いもんな。
この成功体験が、後に悲惨な事件を引き起こすことになる。その話はいずれまた。

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