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2012年6月15日金曜日

伝助の根多帳③

3年の春合宿には『猫の災難』を持って行った。
その年の「みな好き会」という対外発表会にかけるネタである。
私は柳家小三治のテープで覚えた。
この噺の後半は、ただひたすら酒を飲み酔っ払うという展開になるのだが、この件が部員にウケた。どうやら、熊さんの酒に意地汚いところが、私にかぶったようだ。「これはいけるかな」という手ごたえがあった。
合宿から帰って、この噺を仕上げるのに、ちょっとした遊びをした。八代目桂文楽は、『素人鰻』を稽古した時は、実際に鰻を掴んでみたという。この噺で、熊さんは5合の酒を一人で飲む。私もそれに倣って飲んでみようと思ったのだ。
でも、一人でやるのも面白くない。そこで大福さんに白羽の矢を立てた。彼は酒が飲めない。大福さん相手に飲んでみようということにした。両方で飲んだら、自分が飲んだ量が分からなくなるからね。ほんとに勝手な話だな。大福さん、すまなかった。
大福さんの生田のアパートに行く。大福さんのアパートは生田の駅から、一度急な石段を上り、そしてまた同じぐらい下った所にあった。「ずいぶん効率の悪い所にあるなあ。」と、私は理不尽な文句を言ったものだ。
そこで私は日本酒の四合瓶を空けた。酒を飲まない大福さんを前に、くだらない話をぐだぐだとしながら、最後はけっこうべろべろに酔っ払った。 これじゃ『猫の災難』というより、『一人酒盛り』の稽古だったな。いや、『大福さんの災難』と言うべきか。申し訳ない。
大福さんの協力もあって(かどうかは分からないが)、『猫の災難』は私の得意ネタになった。ちなみに私はこのネタで、「大福ゆめの寄席」に栄えある出演を果たしている。(詳しくは大福さんのブログ参照のこと)

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